過去ログ - アイリス「さよなら、ジャンポール」
↓ 1- 覧 板 20
28:ny[saga]
2011/10/21(金) 19:18:46.63 ID:sT9PuPCN0
「それをずっと見てる女の子がいたんだ。なにもはなさないで」
「今度は女の子……か」
「アイリス、はじめのうちは、なにもしてくれないその子がきらいだったんだよ。
だけどね、夢の中で何回かは、その子とおはなしができたんだ。
それでアイリスははなしたんだよ。
『どうしてたすけてくれないの?』って。
そうしたら、その子は言ったんだ。
『わたしはみんなにきらわれてるから』って。
なんとなくだけど、アイリスは思ったんだ。
あの子はむかしジャンポールしかおともだちがいなかったアイリスと同じなんだって。
レニをはじめて見たときみたいに、そう思ったんだよ。
だから、レニみたいにたすけてあげたいんだ」
抽象的過ぎて大神には何とも言えなかった。
たかが夢とも言える。
だけど、夢だからこそ、真実を語っているのではないかとも思った。夢という形で。
『第三の人格』、『イリス』、『アイリス』、『ポルナレフ』。
四つの人格。
四つの性格。
『イリス』は絶望的に生きている。自分は不要な人間だと思っている。
だから、他に三つの人格を作った。
まず、人から好かれやすいよう無邪気で孤独に耐えられる人格、『アイリス』を作った。
だが、その反動で邪悪な人格、『ポルナレフ』が生まれた。
『ポルナレフ』は『イリス』の世界に対する憎悪を、全て背負って生まれた。
喜びとか、愛とか、殆どの感情は『アイリス』に奪われている。
だからこそ、アイリスの身体を欲しがっているのかもしれない。
そして、自己防衛本能なのか、故意なのか、『第三の人格』が生まれた。
『第三の人格』は僅かに残った『イリス』の善意の人格なのだろう。
だから、『アイリス』を守るためだけに存在している。
こういう事なのだろうか……。
全ては、ずば抜けた霊力を持って生まれてしまった、『イリス』という少女を襲ってしまった悲劇。
神の悪戯によって生まれた哀しい存在。
全員、被害者なのかもしれない。
『第三の人格』も『アイリス』も『イリス』も、当然ながら『ポルナレフ』も……。
そして、『アイリス』は『イリス』を救いたいと言っている……。
「でも、アイリス……。その子を助けるという事は……」
「わかってるよ、お兄ちゃん………。わかってるんだもん、アイリスも」
そして、アイリスはその意味を『わかってる』。
ならば、自分は何をすべきなのだろう。
泣き叫ぶほどの絶望と恐怖を抱えて、
必死に自分でない誰かを救おうとしているアイリスを前にして、何が出来るというのだろう。
すると、アイリスは優しい微笑を浮かべて言った。
「だいじょうぶだよ、お兄ちゃん。
そんな悲しい顔しないで、いいんだよ」
言われて、気が付いた。
自分はまた辛い表情を浮かべていたらしい。
「アイリスも、こわいんだよ。ほんとうはいつもみたいに泣きたいんだよ。でも………」
どうして、アイリスはこんな穏やかな表情が出来るのだろう。
自分よりも遥かに年下なのに、何故こんなに強い表情が出来るのだろう。
不安だろうに、恐いだろうに、アイリスは、何故こんなにも強い?
「お兄ちゃんのおかげだよ」
意外な言葉だった。
思わず聞き返していた。
「俺の……かい?」
「うん。お兄ちゃんがそばにいてくれたら、アイリスはだいじょうぶなんだ。
どんなにこわいときでも、お兄ちゃんがいるって思えば、アイリスは……こわくないんだよ」
何も言う事は出来なかった。大神はもう一度強くアイリスを抱き締めた。
こんなに小さな子が必死に頑張っている。必死で決心している。
ならば、自分は見届けよう。何が起ころうとアイリスの傍で。
自分にはアイリスの傍にいる事しか出来ない。
いや、自分にはアイリスの傍にいる事が出来るのだから。
56Res/97.59 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。