過去ログ - アイリス「さよなら、ジャンポール」
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32:ny[saga]
2011/10/21(金) 19:21:21.53 ID:sT9PuPCN0
○
前触れはなかった。
まさに一瞬。刹那。
その刹那に大神は、アイリスの傍から遥かに吹き飛ばされた。
壁にぶつかり、背中に鈍痛を感じながらも、『その時』が来たのだと大神は思っていた。
頭が真っ白になりそうだった。
幾人もの仲間を失くした時の感覚によく似ている。
このまま、自分は『アイリス』を失ってしまうのだろう。永遠に。
『ポルナレフ』を撃退出来たとしても、その先に待つのは『アイリス』の消滅。
消滅。
一切の……無。
アイリスはこの世界から消え去るのだ。消え去ってしまうのだ。
自分には何も出来ない。
アイリスが消滅する。自分には何も出来ない。
自分には何も出来ない。自分には何も出来ない。自分には何も出来ない。
何も何も何も何も何も何も何も……。
「隊長っ!」
異変に気付いたらしく、マリアが部屋に飛び込んできてから叫ぶ。
はっ、と大神は一気に現実に引き戻される。
何を考えているんだ、俺は!
自分を叱咤し、張り手を自分の頬に張る。
そうだ。自分は『アイリス』の決断を見届けると決めたのだ。
ならば、絶望している暇など、あろうはずもない。
自分に出来る事はないかもしれない。
ないかもしれないが、それでも、何もしないよりは余程いい。
現在、自分自身にやれる事をやっておかなければ、一生後悔するだろう。
大神は瞳を閉じ、拳を握る。唇を噛み締める。
そして、決断するように、大神は大きく眼を見開いて叫んだ。
「『ポルナレフ』っ! 貴様に話があるっ!」
久方ぶりに発現したせいか、
『ポルナレフ』の焦点は寝惚けた如く合っていなかったが、
暫くすると、眼を座らせた真っ黒い狂気の表情と化した。
「よお、隊長さん。
久しぶりじゃねぇか。てめぇは殺すっつったはずだが、また俺の前に顔出すとはいい度胸だなぁ?
殺されに来たのかあっ?」
相変わらず、人を喰ったような態度をする男だった。
アイリスが汚されるような気がして、大神は途轍もない不快感に襲われる。殴り掛かりたいたいほどだ。
だが、今回は駄目だ。
『ポルナレフ』と会話をしなくてはならないのだ。
「いや、違う。話だ。そう、話をしようじゃないか、『ポルナレフ』。
俺は貴様と話さなきゃならない事がある。
貴様も、俺に話す事があるはずだろう?」
「話? 話だと? 俺はてめぇに話なんかねぇよ」
呆れたように『ポルナレフ』が返す。
大神の事など、屑ほどの関心も持っていないらしい。
だが、ここで引くわけにはいかなかった。
「だが……」
「だがよぉ、大神、いいだろう。一ついい話をしてやる。
重要な話だぜ。よく聞け」
意外な反応だった。大神の言葉より先に『ポルナレフ』が反応した。
これまでの奴にはない反応だ。
アイリスのリボンを解きながら、昔話でもするように『ポルナレフ』は軽く始めた。
異変に気付いたのか、さくら達がやってきていたが、『ポルナレフ』はそれは無視した。
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