過去ログ - アイリス「さよなら、ジャンポール」
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35:ny[saga]
2011/10/21(金) 19:23:41.53 ID:sT9PuPCN0
地震が更に強くなっていく。
上昇する『ポルナレフ』の霊力に帝都が耐えられないのだ。
しかも、更に最悪な事に、彼はそれを自覚していない。
そうだ。そうなのだ、と大神は思った。
存在するだけで危険な無限大。
それがアイリスだったのだ。
余りにも高過ぎる霊力。
帝都を消滅させ、全てを消滅させ、自分すらも消滅させてしまうほどの巨大過ぎる霊力。
これは……悲劇……なのだろうか?
神がほんの気まぐれで作り出してしまった少女の。
そして、運命なのだろうか?
何もかも消滅させ、自分すら消滅させる運命に、アイリスは飲み込まれてしまうのか?
否、そんな事はさせない!
運命など存在しない。存在するはずがない。存在させてはならないのだ。
だから、大神は言うのだ。
足が震えても、手が震えても、唇が震えても、何が起こるとしても、言うのだ。
「アイリスを……、アイリスを返してくれっ!」
『ポルナレフ』の憎悪、悲哀は痛いほど分かる。
このような出会い方でなければ、分かり合える事が出来たかもしれないのだ。
だが、大神は余計な考えを、振り払わなければならなかった。
二者択一。
『ポルナレフ』は敵だ。『アイリス』を救うためには、彼を止めねばならなかった。
きっと今回の事件の発端は『ポルナレフ』なのだろう。
もしかしたら、彼はあのまま『アイリス』の中で一生を終えていたかもしれないのだ。
だが、数日前の少年の不思議そうな眼が、昔を彷彿とさせるから。
ひどく心に重く残る恐怖が、『ポルナレフ』の胸を騒がせるから。
彼は覚醒してしまったのだろう。
『イリス』を振り払わなければ、自分が自分として存在できないから。
だから……。
「隊長さんよ……」
突然、『ポルナレフ』は穏やかな口調で言った。
「もう遅いんだよ。『アイリス』の思念は殆どもう感じねえ。
さっき俺が出てきた時だろうな、あいつの人格は殆ど散って行っちまった。
だから……、残っているのはあいつの残留思念、その程度だから、だからなぁっ、前言ったろ?
『アイリス』を現世に留めてんのは隊長さんだとよおっ!
だから、悪ぃが死んでくれっ!
アンタが死ねば、『アイリス』は完全に消滅して、霊力は俺のもんだ!
俺のために死ねぇっ!」
その言葉に、大神は唐突に力が抜けていくのが分かった。
「嘘……だろ……?」
『アイリス』は……もう居ない?
助ける事も出来ない?
統合の手伝いもしてやれない?
結局、自分には何も出来なかったのか?
これまで戦友達を失った時のように……?
何も……?
瞬間、アイリスの顔が大神の脳裏を過ぎった。
『お兄ちゃんがそばにいてくれたら、アイリスはだいじょうぶなんだ』
そうだ。諦めたらそこで終わりだ。
全員帰還だ。生きなければ何にもならない。死んだら終わりなのだ。
そして、自分は『アイリス』の傍にいてやると決意したのだ。
どんなになっても諦めず、彼女の名を呼び続ける事を大神は誓ったのだ。
『アイリス』は自分が居れば恐くないと言っていた。
その期待に応えるのが隊長の……いや、恋人としてやらねばならない事だ。
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