過去ログ - アイリス「さよなら、ジャンポール」
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42:ny[saga]
2011/10/21(金) 19:32:40.12 ID:sT9PuPCN0
「発現しなかったのではなく、発現出来なかった……?」

「何だと?」

「そう……。『イリス』は発現しなかったのではない。
発現出来なかったのよ……」

「何でだよっ! あいつの霊力は俺より上なんだぜっ!」

「そうね。霊力だけは……」

「霊力だけ……だと?」

後の言葉は『ジャンポール』が続けた。

「ここから先は僕の推測なんだけど……、彼女は何らかの理由で、
多分、君が言うように、たくさんの人々から害虫扱いされたために……、何人違う自分を作ったんだろう。
でも、そのためには代償も払わなければならなかったんだ」

「代償……」

「高過ぎる霊力を破滅寸前の人格で抑え続ける事。
それが彼女の払った代償。そうは考えられないかな?
一時期、僕は『イリス』と会った事がある。
彼女は後悔してた。幾人もの自分を作り、それぞれに辛い役目を負わせた事を。
だから、彼女はこれ以上の悲劇を生み出さないために、霊力を抑える役目に付いたんじゃないかな……?」

「うん……、そうだよ。きっと……」

泣きながら『アイリス』が言う。
何故、泣いているのか、『アイリス』にも分からないだろう。
だが、『アイリス』は泣いていた。
もしかしたら、僅かに残された『イリス』の残照が、そうさせていたのかもしれない。

完全なる沈黙。先刻までの喧騒が嘘のようだ。
誰も何も言わなかった。言えなかった。言えない雰囲気がそこにはあった。
あれだけ負の霊力で支配されていた『ポルナレフ』が、とても弱々しく見えた。

「どうする?」

不意に『ジャンポール』と思われる声が響いた。

「『イリス』は消滅したよ。消滅した人格は二度と再生されない。
君の好機だよ。どうするの? 僕たちも消滅させるかい?」

淡々とした言葉だった。淡々と事実を述べているという口調だ。
『ポルナレフ』はアイリスの中で、少し逡巡したようになったが、もういい、と言った。
大神は何も言わなかった。
自分に言い聞かせるよう、『ポルナレフ』は繰り返す。

「もういい。俺は消える。
それがてめえらの望みなんだろ?
分かったよ、俺は消える。それで元通りだ。何事もなく、な」

ただのぬいぐるみとなったジャンポールが、その様子をただ冷淡に見つめている。


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