43:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2011/10/22(土) 01:41:42.76 ID:9yuxyDT00
澪は葛藤していた。
元来怖がりの彼女である。見るも悍ましいこの世ならざる者と相対した時点で、普段の彼女なら卒倒していたであろう。
そうならずに、彼女が今なお自意識を保つことができているのは、幼馴染を思う強い心からであるだろうか。
澪(私は…あの亀と一緒だ)
澪は先ほど右手に触れた、ブロンズ像を思い出していた。
澪(のろまで憶病で…うさぎさんのような律に迷惑ばかりかけて、守られて…)
今の澪には、あの亀が、踊り場で待つうさぎの影に隠れ、守られている臆病者の自分であるように思えてならなかった。
澪(思えば今まで本当にずっと、律に頼って生きてきた…)
『4年1組 秋山澪さん、どうぞー!』
『澪〜!!軽音部に入ろうぜ〜!!』
『軽音部が誇るデンジャラス・クイーン! 秋山〜!み〜お〜!!』
律と過ごした思い出が甦ってくる。
今まで律はずっと自分を守ってきてくれたのに、彼女が苦しんでいる現在、自分は何もすることができないのか…
できることなら助けてあげたい。
しかし、グズでのろまで…憶病な自分が行ったところで、足手まといにしかならないのではないか。
澪(そういえばあの亀…)
ふと、どこかで聞いたあの手すりにあるウサギとカメに関する逸話を思い出す。
澪(この学校の創設者も、昔はグズでのろまで虐められてて…)
澪(そんな時に、先生に『誰も見ていないところで努力をし、ゆっくりでもいから前に進め』って言われたんだっけ…)
私にも、なれるだろうか。
あの亀のように前に進んで、律を守れるようになるだろうか。
目を見開いて、前を向く。
澪「私もやります」
澪「やらせてください!」
その眼は、今まで見た彼女のどんな表情よりも、力強かった。
62Res/69.10 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。