111:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 22:23:31.62 ID:CGXDMCHp0
圭介は、白衣のポケットに手を突っ込んだまま、病室をゆっくりと見回っていた。
その隣で資料をめくりながら、大河内が重い口を開く。
「こっちの区画は、もう駄目だ。お前の探してる適合者は、見つからないよ」
「駄目って、どの基準で駄目って言ってるんだ?」
問いかけて、圭介は感情の読めない瞳で、近くの病室を覗き込んだ。
ぼんやりと視線を宙に彷徨わせた女の子が、ベッドに横たわっていた。
鼻や喉にチューブが差し込まれ、いくつもの点滴台が設置されている。
「この子は?」
聞かれた大河内は、言葉を飲み込んでから答えた。
「……網原汀(あみはらなぎさ)、この病棟の中でも、特に重症な子だよ」
圭介は無造作に病室に足を踏み入れ、女の子に近づいた。
そして顔を覗き込む。
女の子に反応はなかった。
目を開いてはいるが、意識はないらしい。
人形のように顔が整った子だった。
その子の艶がかかった黒髪を撫で、圭介は言った。
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