112:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 22:29:29.50 ID:CGXDMCHp0
「一番安定してるように見える」
「……バカを言うな。左半身と、下半身麻痺にくわえて、自殺病の第八段階を発症してる。もう長くはないよ」
「この子にしよう」
圭介は軽い口調でそう言うと、ポケットから、金色の液体が入った細い注射器を取り出した。
大河内が目をむいて口を開く。
「おい、高畑……本気か? 一番重症だって、さっき言っただろう。聞いていなかったのか?」
「狂っていればいるほど好ましい。第八段階? 最高じゃないか。それで、この子はそのまま何日生きてるんだ? いや……『生かされて』るんだ?」
「…………」
「答えろよ、大河内」
「…………三十七日だ」
「取引をしよう」
圭介はそう言って、女の子の点滴チューブの注入口に、注射針を差し込んだ。
そして大河内が止める間もなく薬品を流し込む。
「この子をもらっていく。その代わり、お前はこの子の過去を全て消せ」
「GMDが効くかどうかも分からないんだぞ! それに、もう長くはないと……」
「効くさ。そのために開発されたクスリだ」
淡々とそう言って、圭介はポケットに手を突っ込んだ。
そして背を向けて、病室の出口に向けて歩き出す。
「意識が回復したら、連絡をくれ」
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