120:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 22:57:49.70 ID:CGXDMCHp0
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気がついたとき、彼女達は打って変わって爽やかな、小鳥がさえずる丘の上に立っていた。
岬が体の痛みに耐え切れず、足元の草むらに崩れ落ちる。
彼女を一瞥してから、汀は木が立ち並んでいる丘を見回した。
蝶々が沢山飛んでいる。
それぞれ色や大きさは違ったが、共通していたことは、紙で出来ていたということだった。
近くの蝶々を一匹捕まえて、汀はそれを握りつぶした。
途端、周囲に青年の悲痛そうな声が響き渡った。
<僕はやってない! 僕は違うんだ。頭の中の人が命令したんだ!>
くしゃくしゃになった蝶々を広げてみる。
そこには、血液のようなもので雑に、先ほど流れた音声と同じものが書かれていた。
汀はそれを脇に放ると、もう一匹蝶々を捕まえようと、その場をはねた。
『汀、どうだ?』
圭介に問いかけられて、汀は言った。
「ダイブ、心理壁の中に進入成功したよ。」
『トラウマに囲まれてたんじゃなかったのか?』
「この人の心理壁を壊しちゃった。どうせ自己崩壊してる途中だったから」
それを聞いて、圭介は一拍置いてから深くため息をついた。
『お前……』
「廃人になるね。この人」
何でもないことのように言って、汀は面白そうに、紙の蝶々に囲まれながらくるくるとその場を回った。
「でも、いいじゃない。どうせ死刑で死んじゃう人だよ?」
『…………』
「圭介?」
『治療を続けろ。いいか、お前は人を救うんだ。そのためにダイブしてるんだ。分かるな?』
「圭介、私思うんだけどさ」
そこで汀は、ヘッドセットに向かって、困ったような顔をした。
「死刑で殺される人を治して、それで、救ったって言えるのかな?」
『ああ。お前は余計なことを考えず、救えばいいんだ』
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