過去ログ - マインドスイーパー
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9:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2011/10/22(土) 00:01:13.44 ID:CGXDMCHp0
1 劣等感の階段

「……と言うことで、旦那様は一命を取り留めました」

眼鏡をかけた、中肉中背の青年が、柔和な表情でそう言った。
それを聞いた女性が、一瞬ハッとした後、両手で顔を覆って泣き崩れる。

「主人は……」

少しの間静寂が辺りを包み、彼女はかすれた声で続けた。

「主人は、何を失くしたのですか……?」

「視力です」

何でもないことのように、青年はそう言ってカルテに何事かを書き込んだ。

「視力?」

信じられないといった顔で女性は一旦停止すると、白衣を着た青年に掴みかからんばかりの勢いで大声を上げた。

「目が見えなくなったということですか!」

「はい。しかし一命は取り留めました。自殺病の再発も、もうないでしょう」

「そんな……そんな、あまりにも惨過ぎます……惨すぎます!」

青年は右手の中指で眼鏡の中心をクイッと上げると、またカルテに視線を戻した。
柔和な表情は、貼りついたまま崩れなかった。


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