過去ログ - 京介「思えば遠くへ来たもんだ」
1- 20
10: ◆Neko./AmS6[sage saga]
2011/10/24(月) 21:44:42.60 ID:ucx2SsZ8o

慣れない飛行機での移動と、営業所への着任の挨拶でかなり緊張したのかもな。
そのまま着替えもせず、ついウトウトと眠っちまったようだ。
ベッドに備え付けの時計を見ると、チェックインからすで二時間が経過していた。
中途半端な時間に昼飯を食ったせいか、今のところ腹もあまり減っていない。

テーブルに置かれたホテルの案内を見ると、最上階にはスカイラウンジがあるらしい。
そこは食事ができるレストランの他、洒落たカウンターバーが併設されていた。
札幌の夜景を見ながらカウンターバーで一杯、というのも洒落ている。

「ウイスキーをハイボールで……少し、薄めでお願いできますか」

無口で落ち着いた雰囲気のバーテンダー以外に客がいないのを確かめると、
俺はスーツの胸ポケットから一枚の写真を取り出した。
その写真を眺めていると、後ろめたい気持ちと寂しさが胸に込み上げてくる。

目の前にコースターが敷かれ、その上にハイボールのグラスが静かに置かれた。
カウンターの背後の棚に並べられた名前も知らない洋酒のボトル。
ハードボイルド? 石原裕次郎? 意味もなくそんな単語が俺の頭に浮かぶぜ。

「ブランデーにすりゃあ良かったかも……」

「あの……お隣りに…………座ってもよろしいですか?」

いきなり背後から声を掛けられ、俺は驚いて声のする方を振り向いた。
そこにはつばの広い帽子を深めに被り、大きくて濃いサングラスを掛けた女が立っていた。
髪はショートカットなのか、帽子の中にすっぽりと納まっている。
涼やかな声と清楚な服装からして、『夏休みは軽井沢の別荘で――』って感じだな。
本当のことを言えば一人で飲んでいたかったんだが、これも何かの縁かもしれん。

「えっ、ええ……どうぞ、空いてますから」

「ありがとうございます……」


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
103Res/78.27 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice