過去ログ - 淫魔「んふふ」 修道女「闇の気配がする……」
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797: ◆WjI07W0ub6
2012/08/02(木) 23:01:55.61 ID:VZOkYNnJo
太陽が完全に昇り、午前のお茶の時間になる頃には城の屋上にも賑やかになり、祭神の城は昼を前にして祭りの熱気に包まれていた。

観客席を魔人が埋め尽くす。人型の者が多いが、耳が大きかったり、鱗や羽毛に被われた者も多く、完全に4つ脚の獣や液状のドロドロした塊も、それぞれの観客席におさまっていた。

試合場を囲む家々のテラスからも、昼間から酒を片手に歓声が上がる。酒場から流れる濃い酒と焼き物の匂いが一番低い試合場のあたりにまで流れ込み、試合場のまわりでも屋台の煙が立ち上り、空には竜や鳥人の群れが飛び、旗がたなびき花火が上がる。

ひときわ大きな音花火が鳴り響き、白い煙が上空の風に吹き流されていった。

試合場の端に御輿を持ち込んだ祭神は、試合場の真ん中まで歩み出て観客に手を振る。

祭神「みんなー! こんにちはー!」

こんにちはー! と祭神の城を揺るがすほどの大音声が返ってくる。
マイクを使っていないのに、祭神の声は広大なコロッセオ中に響き、そして耳にうるさくない。
耳にする者に、おのずと聞きたいと思わせる不思議で魅力的な声を振りまいて、祭神は続けた。

祭神「この戦争は、待ちに待った戦争だ。天界の奴らを追いやり、雲の向こうに押し込める、一世一代の大戦争だ!」

ざわと城が揺れ、祭神はさらに続けた。

祭神「そしてその戦のまえに、わたしはみんなの強さを知りたい。磨き抜いたみんなの技を術を……そう、お前たちの、お前たちの力を見せてみろ!」

祭神の低めた声に、観衆のざわめきが止んだ後、怒濤のような歓声がコロッセオからわき上がった。

祭神「8部門の優勝者たち、そしてわたしの選んだ8名の実力者……わたしは知りたい。魔界の南で、誰が一番強いのか! その答え、お前たちは知りたいか!」

オオオオオオオオオッ!

コロッセオを埋め尽くした観客の声は嵐となり、祭神に降り注ぐ。

祭神「そうだ。お前たちの力はわたしの誉れ、南の誉れだ。南で一番の、勇者が誰か知りたいか!」

祭神の投げかける問いに、コロッセオはさらに揺れる。

並の人間ならば魂が飛び散ってしまう轟音を一身に受け、祭神は笑顔を見せた。

祭神「ならば試合を始めよう。第1試合、1人目の選手は無差別級優勝者、北方の巨人将軍を父とし、東方の竜人公主を母とする、南の誇る力の化身、巨竜!」

巨竜「はっ!」

祭神の示した右手から現れたのは、軍艦が立ち上がったかのような巨大な竜人だった。
黒緑の分厚い甲冑に、研ぎ澄まされた巨大な剣、顔つきは鼻先の短い竜で、ちょうど人とトカゲの間、堅い鱗に被われた顔には、金色の眉と武人らしいヒゲが生えそろう。

試合場の袖で、向こう側から登ってきた竜人に、修道士はあきれたような声を上げた。

修道士「な……なんですかアレ」

メイド「おお、早速の優勝候補です。巨竜と言えば、南方巨人の筆頭ですから」

修道士「あんなに……鬼神や龍神よりも大きいのでは?」

メイド「竜と巨人のハーフ、およそ戦うことに関しては、理想的な混血ですから。身体も力も破格なんです」

半竜の巨人に圧倒される修道士の耳に、さらに祭神の声が響く。

祭神「対するは、700年間、石の像として瞑想を続け、人の身にありながら術の奥義を極めた大魔法使い、修道士! おつきのメイドといっしょに登場だぁ!」

歓声の方向が、石の階段を登る修道士の背中に集まり、試合場に登った修道士は、観衆の視線を一身に浴びた。

すでに酒の入っている者、競技者を品定めしながら賭博をする者、中には修道士の故郷の文字を使って「がんばれ修道士様!」などと書かれた横断幕も見える。

そして対戦相手の巨竜は、試合場の向こう端に立っているのに、頭は見上げるほど高い。

祭神「審判!」

祭神が示すと、修道士と巨竜の間にトカゲが駆け寄り、縦縞シャツの襟を正した。

審判「第1試合、巨竜対修道士チーム。制限時間は30分。相手チームの、すべての選手の試合不能か降参させる、もしくは場外に出した時点で勝利となります」

祭神「よし、双方とも力を尽くせ」

巨竜は目を閉じて深々と頭を下げ、修道士も皇帝に向かうように礼を返す。

沸騰寸前の熱を秘めたコロッセオの空気に、審判の声がこだました。

審判「始め!」


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