過去ログ - 勇者「ハーレム言うなって」魔法使い「2だよっ!」
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881: ◆3VOBH3KJAk[saga]
2012/02/20(月) 15:34:22.00 ID:T3y4b9Dc0




死刑執行の場、というには、この場所は余りにも相応しくなかった。

城内のエントランス、この大きな空間で、今死刑が執行されようとしていた。

「皆さん、静粛に」

平手を打ち合わせ、小柄な禿頭の男が辺りに意を注ぐ。

この憂国の悪腫、怪僧であった。

「只今より、悪しき隣国への見せしめとして、逆賊の王家の一人である姫を処刑します」

大きな声で、エントランスを囲んだ貴族や、王位継承者達に事を淡々と伝える。

「おい、連れて来い」

その怪僧の声に、屈強な悪教徒――――この怪僧は、手下の教徒を幾人か従えていた――――が、乱暴に姫をエントランスに引き連れる。

手を縄で縛られ、裸足で歩くその美しい少女は、その唇を固く結び、強い眼差しで怪僧を睨めつけていた。

エントランスの中心に設置された高台の上に隣国の姫を立たせ、怪僧は口を開いた。

「この国がより栄えるには、この逆賊の首を刎ねねばなりません」

如何にも本意ではない、とでも言いたそうな面持ちで、わざとらしいまでに悲しい顔を彼女に向ける。

「少し、待ってはくれぬか」

王は、怪僧に問いかけた。怪僧は理由を言えと言わんばかりに王の次の言葉を待つ。

「何も、殺す事は」

「王、王よ。貴方様は優しすぎる。優しすぎるのです」

怪僧は王の言葉を遮って答えた。

「このまま隣国と現在の関係を保ち続ければ、王や貴族の方々は、暮らしを維持できなくなります」

隣国の姫の肩に、怪僧の手が置かれる。その手を隣国の姫は汚らわしく思った。怪僧は続ける。

「そして、いずれは隣国にこの国が滅ぼされてしまう。それは皆様にとっても本意では無い筈です」

その言葉に、エントランスを囲んだ高貴な観客が沸いた。そこには、正義など無く、ただ醜い欲があった。

「それは、そうなのだが」

王はその怪僧の言葉に気圧され、もう言葉を続ける事は無かった。

「それでは、只今より死刑を執行させていただきます」

隣国の姫は、騒ぐ観客を見渡していた。求める姿は、どこにも見当たらなかった。


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