過去ログ - 勇者「ハーレム言うなって」魔法使い「2だよっ!」
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◆3VOBH3KJAk
[saga]
2012/02/20(月) 15:38:04.05 ID:T3y4b9Dc0
「何」
怪僧は焦り、恐れた。
予想だにしていない事が起きた。
誰もが、予想だにしていない事が起きていたのだ。
「さて」
その混沌の中心の人物は、剣を振るう。
切先を鈍く光らせていた赤い命の水が、絨毯に跡を刻む。
「これより、お前は。俺の言う事を聞いて貰おうか」
末王子は、怪僧に言い放つ。
喉の奥で妙な音が鳴る。右脳が軋み、左脳が乾く。
怪僧は、自分でも気付かずに、後方の部屋に向かって声を荒げていた。
「この逆賊を斬り払え!」
その言葉に、屈強な教徒が数十人ほど部屋から走り出でて、末王子を取り囲んだ。
「貴殿、王家に就属する身で王家の誇りを持たぬか!!」
決闘のシステムを無視し、無様な真似を見せる怪僧に末王子は怒りをぶつけ散らした。
「知らぬ!それに、周りを見るが良い!」
末王子は、自分を取り囲んだ教徒達を越して、エントランスの壁に円になり張り付いている貴族達を見た。
「ここに王家の意思があると思うのか」
怪僧の言葉を、末王子は聞いていなかった。
貴族達は皆、剣を抜き、王家の人間の近くにいる者は、その王家の人間の首筋に切先を当てていた。
「これは、何を」
王はその様子の異変に気付き、慌てて席を立つ。しかし直ぐに動きを止めた。
その首筋にも同様に、剣の切先が当てられていた。その剣を辿れば、怪僧がそこに居た。
「予定が少し早まりましたが、今日ここで王家は滅んで頂きます」
「貴様っ」
「動かないで下さい。貴方はここでは殺さず、隣国に無駄に攻め入った凶皇として、後に民衆の前で処刑するつもりなのですから」
王は戦慄した。そして怪僧の真意の全貌にそこで初めて気付き、己の愚かさを激しく悔やんだ。
怪僧は、王家を乗取るために、貴族達をも取り込んで、機が熟すのを待っていたのだ。
大義名分を得て革命を起こすつもりでいたのだろうが、まだ王権が健在のこの時に、末王子に力を奪われるのを恐れ、強攻策に乗り出したのである。
「そういう事です。末王子、貴方も――――……」
そう言って、振り返った怪僧は、自分の目を疑った。
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