過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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◆ES7MYZVXRs
[saga]
2012/08/21(火) 10:51:39.71 ID:g/v3slEao
上条が口を開いた瞬間、その体が浮き上がった。
そして驚く暇もなく、数メートル前へ飛ばされる。
上条はいきなりの事に対処できるはずもなく、そのまま廊下をゴロゴロと転がる。
何が何だか分からない。
感覚的にはおそらく念動力の類ではない気がする。まるでベルトを掴んでそのまま放り投げられたような感じだった。
すぐに辺りを見渡すと、近くで麦野が同じように床に転がっていた。
相当恐ろしい顔になっており、すごく話しかけづらい。
カラン、と乾いた金属音が背後から聞こえた。
振り返ってみると、先程まで居た場所に何かが落ちている。
銀色に鈍く輝く棒状のものだ。手の中に収まるくらいの大きさで、一本だけではなく何本か同じ物が廊下に転がっている。
上条はそれにどこか見覚えがある気がするが、思い出せない。
美琴だけは同じ場所に立っていた。
どうやら投げ飛ばされたのは上条と麦野だけらしい。
いや、というより投げ飛ばした張本人こそが美琴なんだろう
能力でも暴走してしまったのだろうか、と心配して口を開こうとする……が。
あるものが目に入り、喉まで来ていた言葉がどこかへ消えさってしまった。
上条は目を見開く。
床に転がっている銀色の棒と同じものが、美琴の肩と足に一本ずつ突き刺さっていた。
ポタポタ……と、真っ赤な血液が廊下に垂れる。
「御坂!!!」
「止まらないで!! 黒子に狙い撃ちにされる!!!」
上条はその言葉を聞いた瞬間、弾かれたように立ち上がると真っ直ぐに美琴の方へ駆け寄る。
今の言葉で、自分でも信じられないくらいの早さでここで何が起きているのか理解できた。
あの銀色の棒は白井が使っている鉄矢だ。
つまり、どこかからテレポートを使ってこちらの体の中に直接転移させてきている。
美琴はそれに気付いて上条と麦野を磁力を使って投げたのだろう。
上条は美琴を抱えて、前方へ飛び込む。
後ろではカランカランと、鉄矢が何もない空間から現れて床に落ちる音が連続する。
もしもそこに自分がいたらと、背筋に寒いものを感じた。
「な、なにやってんのよ!」
「お前、その足じゃろくに動けないだろ!」
美琴は若干顔を赤くして抗議してくるが、上条は聞かない。
彼女の足には今だに鉄矢が刺さっており、出血も止まっていないのだ。
すると後方の方から、
「クソが!!!」
麦野のそんな声と共に、ドガァァ!! と左手の一番手前のドアが蹴り破られた。
どうやら、どこかからこちらを狙っている白井を仕留めようとしているらしいが、あの様子だと真っ二つにしてしまいそうな勢いだ。
美琴はそれを見て、顔をしかめながらフラフラと立ち上がると、麦野が入って行ったドアへ走り出す。
上条は慌てて口を開く。
「おい御坂! お前は一旦ここから出て……」
「大丈夫、そこまで酷くないから。アンタは他の部屋行って黒子を探して!」
美琴は口早にそう言うと、部屋に入っていってしまった。
確かに普通に走れているようには見えたが、その表情は険しく痛みを堪えているのが分かった。
上条はどうしようかと一瞬考えを巡らせるが、向こうには麦野も居るので美琴のことは任せて、自分は言われたとおりに白井を探すことにした。
走り出すと同時に、すぐ後ろに鉄矢が現れ、床に落ちてカランと乾いた音が響いた。
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