過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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493: ◆ES7MYZVXRs[saga]
2012/11/25(日) 02:17:23.00 ID:VBYVP1jFo

しかしそれは絶対ではない。
幾つものピースが上手く咬み合って、それで初めてとっかかりが生まれる。
その上で幸運や機転が重なる事で何とか勝ちを拾うことができる。

それを考えれば、こうして為す術なく倒れるという事は可能性的にまったくおかしい事ではないのだ。

(それでも)

瞼の裏に一人の少女が浮かぶ。
例え何を犠牲にしても守りたい、大切な人。
そして次々と彼女の周りには他のアイテムのメンバーも現れる。

かけがえのない、大切な居場所だ。

(俺は――ッ!!!)

浜面は薄れゆく視界の中でついに閃いた。
手に持った水を吸って重くなった制服の上着、それを泡浮に向かって思い切り投げつけた。
突然の行動に、泡浮の目が大きく開かれる。
浜面が投げつけた長点上機学園の制服は、真っ直ぐ飛んで泡浮の顔を覆った。

「うっ!!」

泡浮は初めて小さく唸り声を出す。
その直後だった。

浜面の頭を覆っていた水の塊が、まるでシャボン玉のように弾け飛んだ。

「ぶはっ!! がはっ……ごほっ!!!」

神の恵みを受けるかのように、すぐに酸素を肺に取り込む。
だがゆっくりしている暇はない。今はチャンスだ。
泡浮はまだ頭を覆っている濡れた制服と格闘している。

浜面は迷わず起き上がって前へ飛び出す。
まだ呼吸が整っていないが、そんなものは関係ない。

「ふっ!!!」

ガッ!! と鈍い音が響く。
浜面の手刀が泡浮の首筋を捉える音だ。

彼女は音もなくフラリと崩れ落ちる。
浜面は彼女が頭をぶつけないようにその体を受け止めた。

「……なんとか、なったか」

まだ荒い息を整えながら呟く。

ずっと見落としていた。
浜面の頭を覆う水を操っていたのは遠くに置き去りにしてきた湾内だったが、泡浮が彼女の代わりに“目”になっていた。
それならば泡浮の視界を塞いでしまえば、湾内……いや、食蜂は水の塊を制御する事ができなくなる。

今回に限っては、食蜂が操っていたという事が良い方向に転がったかもしれない。
泡浮の能力は流体反発(フロートダイヤル)、浮力を操作するものだ。
だから最後に浜面が制服を彼女に向かって投げた時も、浮力をゼロにすれば届くことはなかった。
その辺りの一瞬の判断の差、それが出たのだろう。
まぁ浜面はそれを知る由もないのだが。
 


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