過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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◆ES7MYZVXRs
[saga]
2013/05/15(水) 15:28:12.54 ID:51CZBCmfo
空気が凍った。
美琴は上条にキスする寸前で固まったまま、一方通行はドアノブに手をかけたまま完全停止している。
お互い何を言えばいいのか分からない。物音一つたててもいけない気がする。
あの一方通行ですら、その表情から面食らっていることが分かる。
美琴の頭の中は完全に真っ白で、言い訳など何も思い浮かばない。
そもそも、この状況で言い訳のしようがあるのかという疑問もある。
何とも気まずい沈黙が流れる。
そして。
「数秒で済ませろ」
そう言い残し、バタンと彼は出て行ってしまった。
その後、彼女はどうするか。気を取り直して今度こそキスするか。
そんな事できるはずがない。
あんな状況を見られた美琴はもう色々とダメだった。少し落ち着いた所で、一気に色々なものが胸に押し寄せてくる。
頭はグチャグチャ、恥ずかしさの許容量は完全に超え、その溢れた分が眩い閃光へと変換され――――。
「ふにゃー」
「あばばばばばばばばばばばばばばばば!!!!!!」
上条は、美琴の膝枕が危険だという教訓を得た。
***
時は少し遡る。
上条が女部屋へ突撃していった少し後に一方通行も部屋を出た。
といっても、もちろん上条と一緒に突撃をかけるためじゃない。流石に彼はそこまで愉快な人間性は獲得していない。
この宿の二階ロビーの近くには、景色を眺めるためのバルコニーがある。
ここの立地条件は素晴らしく、そのバルコニーからは綺麗な山の景色を見ることができ、昼間は展望台として宿泊客以外にも開放していたりするらしい。
そんな良い場所ではあるのだが、流石に夜になると山も真っ暗で見えなくなってしまうので外に出てくる者もほとんどいない。
まぁ、今は学園都市からの受け入れで貸切状態なので、元々他に客は居ないのだが。
そのバルコニーの端っこ、手すりに両腕を置いた状態で一方通行は夜風を受けていた。
見上げれば綺麗な満天の星空。吐く息は白く、真っ直ぐ空へと昇っていく。
普段暮らしている学園都市では中々見られない、田舎ならではの夜空だ。
それなりにアルコールが回っているのだろう。冷たい夜風が心地よいと思えるほどには顔が上気しているようだ。
しかし、いつまでもここに居れば風邪を引いてしまう。浴衣の上に茶羽織という格好は、とても二月の夜を凌げる服装ではない。
能力を使えば問題無いだろうが、こんな事にいちいち使うのも馬鹿らしい。
それに能力を使えるのであれば酔いや顔の上気も全てベクトル変換で調整すればいいわけで、流石にそれは色々と台無しだと一方通行も思ったわけだ。
そんなわけで、ガラス戸からロビーに戻る。
すると、そこにあるソファーの一つに銀髪碧眼の少女が座っていた。インデックスだ。
こうして見ると純正外国人でも浴衣はよく似合っており、大したものだと思う。服の方が、だが。
彼女はこちらに気付くと、
「もしかして飲み過ぎちゃったとか?」
「馬鹿言え。あの部屋が暑苦しかったから涼みにきただけだ」
「ふーん、でもあなた、少し顔赤いよ」
「……ちっ」
元々白い肌なのでそういった変化は分かりやすいのだろう。
一方通行は忌々しげに舌打ちをすると、さっさと部屋に戻ることにする。
その背中にインデックスの声が飛ぶ。
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