過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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◆ES7MYZVXRs
[saga]
2013/06/27(木) 14:22:37.98 ID:g9sjJPBmo
***
ボカッと、額への謎の打撃によって目が覚めた。
目の前には、風呂場でもない病院でもない、知らない天井が浮かび上がる。
上条は一瞬自分がどこにいるのか分からなかった。
そしてすぐに思い出す。そういえば学園都市の計らいで旅行に来ていたのだった。
ぼんやりとした頭のまま上半身を起こすと、すぐ近くに浜面がだらしなく寝ているのを見つける。
おそらく先程の打撃は、彼が寝返りを打った際に裏拳かなんかが入ったのだろう。
まぁ、元々御行儀よく寝ているようなイメージでもないため、特に不思議なことでもない。それなりに痛かったが。
部屋を少し見渡してみる。まだ朝早いのか、部屋は全体的に薄暗い。
一方通行は少し離れたところで音もなく眠っており、垣根はどちらかというと浜面寄りで、浴衣をはだけさせてだらしなく寝ている。
部屋にはただ浜面のいびきだけがうるさく響いていた。
昨日はいつ寝たんだっけ、とふと考える上条。
あまり良く覚えていない。
酒をかなり飲んだという事はうっすらと記憶にある。その後一方通行に支えられてこの部屋まで戻ってきた気もする。
戻ってきた、という事はどこかに行っていたという事になるが、その辺りはあまり良く覚えていない。
何となく、とかなり曖昧だが、美琴の声を聞いた気もする。
ともあれ、割とパッチリと目が覚めてしまった上条。
とりあえず顔でも洗おうかと立ち上がると、流石にもう酒は抜けたのか真っ直ぐ普通に歩くことはできるようだ。
途中、時計で時間を確認すると、まだ五時を回った直後という事が分かる。もっとも、昨日は何時に寝たのかは分からないが。
洗面所にて刺すような冷水で顔を洗うと、再び部屋まで戻ってくる。
まだ、誰も起きない。時間が時間なので当然と言えば当然だろう。
一方通行なんかは起こせばすぐに起きそうな雰囲気を放ってはいるのだが、実は朝に弱くて起き上がりざまにベクトルパンチなんかをもらったら洒落にならないのでやめておく。
さて、それではこの暇な時間をどうしようかと考えた上条。
時間があったら何かをやらなくてはいけないと考えるのは日本人の悪いところだというのを聞いたことがあったような気がする。
といっても、男子高校生にとって何もせずにぼーっとしているだけというのは、精神的にかなり辛いものがある。
それから少し考えて、上条はふと思いつく。そういえばここは温泉旅館だ。
***
そんなわけで朝から温泉に浸かることにした上条。
脱衣所と浴場を挟むドアを開けると、モワッとした熱気が押し寄せてくる。朝風呂を利用する客への配慮は万全のようだ。
そして、上条はシャワーで軽く体を流すと、浴場と露天風呂を隔てるドアを開けた。
即座に二月の朝の寒気が全身を駆け巡る。どうやら雪も降っているようだ。
全裸の上条は思わずブルブルッと震えると、足早に湯船に向かった。雪が降っていても入れるように、屋根はきちんとついている。
ザブン、とゆっくり肩まで湯に浸かる。
立ち込める湯気は真っ直ぐ昇っていき、屋根にぶつかり一旦留まったあと、横を抜けてそのまま上空へと吸い込まれていく。
こうして湯に浸かりながら、空から舞い降りる白い雪を眺めるのは上条にも風流というものを感じる事ができた。
朝の静かな空気だけが辺りを漂う。まるで時間がゆっくり進んでいるような、そんな感覚を覚えつつ、上条はゆっくりと目を閉じた。
その時だった。
「あれ、誰か居るのかな?」
そんな声が隣の女風呂から聞こえてきた。丸く柔らかい声だった。
上条は目を閉じたまま、
「おう、インデックスか」
「とうま? 昨日あれだけ飲んでたのに早起きだね。大丈夫? 二日酔いとかしてない?」
「大丈夫、大丈夫、スッキリしてる。たぶん、寝たのが早かったからか、目が覚めちまったんだ。まぁ、浜面の拳が飛んできたってのもあるんだけどよ」
「ふふ、なんだかそれって旅行らしくていいね」
聞いている分にはそう思うかもしれないが、実際にやられると痛みもそうだが、驚きの方でも勘弁してもらいたいものだ。
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