過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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696: ◆ES7MYZVXRs[saga]
2013/06/27(木) 14:30:37.08 ID:g9sjJPBmo

それならば、と垣根はウェアの中に手を入れる。

「よっと!」

振り返りざまに右手を素早く振る。
そこから放たれたのはやはり雪玉だ。予めいくつかストックは作っておいたのだ。

「なっ――ごばっ!!!」

見事顔面に命中。
普通に投げていたら避けられたり防がれたりしたかもしれないが、こうして投げる直前まで相手に悟らせないことで反応を遅らせる事ができる。

雪玉によって視界を奪われた男は、ズドン!! と木に激突。真っ白な新雪を巻き上げてその中に消えていく。
そしてそんな哀れな末路に、他の男達の視線が集中する。そこが新たな隙だ。

垣根は気付かれない内に素早くウェアから新たな雪玉を取り出すと、

「おらっ!!」

「ぶぼっ!?」

またまた命中。この少年、生きる道が違えば有名な野球投手になったのかもしれない。
その後雪玉をくらった男は、最初の者と同じようにあえなく木に激突することになる。

後一人だ。
最後に残った男は後ろから威勢よく声を飛ばしてくる。

「セコい真似しやがってクソヤロウ!!!」

「バーカ、お前らが間抜けなだけだ。倒れゆく味方を気にかけてるようじゃまだまだ半人前、場所が場所ならすぐ死んじまうぜお前ら。
 あ、いや、お前らの場合は仲間を気にかけたっていうか、ただ目に付くものに気を取られただけか」

「はっ、ご忠告ありがとよ! だが、もう雪玉なんていうガキくせえものなんか効かねえぞ。あんなもん、ちゃんと見てればどうにでもなる!!」

「へぇ、お前らのレベルじゃ子供の雪合戦くらいが丁度いいと思ったんだけどな。わざわざこっちが合わせてやってんだから感謝してほしいくらいだ。なんせ石すら入ってないんだぜ」

「吠えてんのも今のうちだぞオラァァ!! 滑りきったら顔の形変わるくらいボコボコにしてやるから覚悟しとけ!!」

「脅しとしちゃ落第点だな」

垣根はあくまで余裕の表情を崩さない。まるで、小さい子供をあやしているかのような印象も受ける。
こうやって話している間にも二人は木々の間をどんどん進んでいる。

ここで、男は何か違和感でも覚えたのか、眉をひそめる。

「おいテメェ、何でそんな後ろばっか見てんのに木にぶつかんねえんだ」

「ん? 前も見てんじゃんたまに」

「それで何で木を避けられるんだって聞いてんだよ!!」

男の言葉には自然と焦りが混ざる。
今二人は、本来のコースとは外れた林の中を滑っている状況だ。
そんな所を滑るというのはかなりの神経を必要とするものであり、男も何とかついていっている状態なのだろう。

それに対して垣根は大して難しくなさそうに、あまつさえ後ろを向いたりするほどの余裕さえ持っている。
少年はニヤリと相手を小馬鹿にするような笑みを浮かべると、自分の頭をコツコツと叩く。

「ここの出来が違うんだよ。例えば、俺は今のところ通り過ぎた木の数まで言えるぜ。前方の景色なんてもん、ずっと見てなきゃいけねえもんでもねえだろ」

「なにを……バカな……」

「信じるかどうかはお前の勝手だ。ただ、自分が今どの辺りを滑っているかくらいは知っといた方が良いと思うけどな」

「な、何が言いてえ!!」

「自分で考えろ、俺はそこまで親切じゃねえよ」

男がゴクリと喉を動かしているのが分かる。
これは単なるハッタリで、動揺を誘っているに過ぎないと考える事もできるかもしれない。

しかし、実際に。

垣根はほとんど前も見ずに木々の間を滑り抜けていくという所業を目の前で楽々とこなしている。
そんな現実離れした光景が、彼の言葉に説得力を持たせている。



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