過去ログ - 禁書「イギリスに帰ることにしたんだよ」 上条「おー、元気でなー」
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◆ES7MYZVXRs
[saga]
2013/09/19(木) 05:06:06.63 ID:EJeQ9ZV8o
麦野はそんな美琴を観察するようにじっと見つめていた。
彼女も彼女で思う所も多くあるのだろう。
「はっ、表向きじゃ普段通りを装っていても、やっぱ結構キツイのね」
「当たり前でしょ、初恋が砕け散ったのよ。普通はボロボロ大泣きして今頃は目を真っ赤にしてる頃よ」
「アルコールの力を借りないと泣けもしない奴がよく言うわね。ほら、ここは人通りもないみたいだし、私の胸を貸してやってもいいわよん?」
「結構よ。それに泣けないとかアンタにだけは言われたくないわ」
「……それには何も言えないわね」
麦野は愉快げに小さく笑う。
レベル5の女は恋に破れるというジンクスでもあるのだろうか。
いや、科学の粋の結晶のような超能力と、ジンクスといった非科学的なものを結びつけるのはどうかとは思うが。
例えそうだとしたら、強大な能力を手に入れることができるとしても、かなり大きな代償だ。思春期の学生にとっては特に。
そんな事を考えていた美琴だったが、麦野の言葉にすぐに意識を持っていかれる。
「それにしても、アンタもホント面倒くさい性格してるわよね。上条と付き合いたいなら、食蜂と同じようにインデックスがイギリスに帰るまで待てば良かった。
と言っても、それができないのがアンタなわけで、結局はどう足掻いてもこうなる運命だったのかもしれないけどさ」
「そうね。別に後悔はしてないわよ、自分で出した結論だったし。アンタだって少しは分かるでしょ」
「まーな。本当は分かりたくもないけど」
美琴も麦野も、自分で決めた道を真っ直ぐ進んだ。
その先には想い人との未来はなかったわけだが、かといって後ろを振り返って立ち止まったりはしない。
彼女達はその道を歩き続ける。ただひたすら、前を向いて。
美琴は手の中にある指輪を見る。
初心な恋心が詰まった大切な物。それでも、結局彼には渡すことができなかった物。
目を閉じれば次々と浮かんでくる。
不良に言い寄られている所に割り込んできたあの時。河原で対決し、結局追いかけっこになったあの時。
鉄橋の上、目の前が真っ暗になった時に都合のいいヒーローのように登場して全てを救っていったあの時。
素直になれなかった恋人ごっこや罰ゲーム。彼の記憶喪失を知り、そしてこの気持ちの正体を知ったあの時。
第三次世界大戦で彼を追って、そして並べなかったあの時。グレムリンとの戦いでようやくその隣に立てたあの時。
全てが手放しで喜べるような楽しい記憶でもなく。
むしろ素直になれなかった後悔やら、失敗した時の喪失感といった負の感情が湧き出る記憶も少なくないのだが。
まぁ、総括してみれば何だかんだ楽しかったとは思う。
美琴はクスリと口元に笑みを浮かべた。
結果的にフラれてしまったが、それでもこの恋自体は大切なものに変わりなかった。
手を真っ直ぐ天へと伸ばす。
「――ありがとね」
鈍い震動、轟音と共に。
明るいオレンジ色の閃光が、真っ直ぐ空へと昇っていった。
音速の三倍で射出された指輪は空気抵抗により空中で燃え尽きる。
再び、この手に戻ってくる事はない。
美琴はしばらく指輪が消えていった青空を眺めていた。
頭の中は空っぽだ。スッキリとした爽快感と、少し痛い喪失感があった。
それでも、小さく息をつくと、
「よっし、終わり」
そう、笑顔で言うことができた。
それは完璧な笑顔ではなかったかもしれない。だが、例えそうだとしても、一番大切なのは笑おうと思える事なんだろう。
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