過去ログ - 魔王「世界の半分はやらぬが、淫魔の国をくれてやろう」
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720: ◆1UOAiS.xYWtC[saga]
2011/12/21(水) 00:01:23.57 ID:nfQOajV2o
勇者「……『魔王』はもういない」

魔法使い「そうよ、あんたが倒したんじゃない!だから、早く……」

勇者「…じゃあ、もう。『勇者』もいらないだろ?」

―――軽快な音が響く。

魔法使いの右手が、勇者の左頬を打った。
感情に任せて妙な打ち方をしたためか、手首を左手で抑えながら彼女は勇者を睨みつける。

魔法使い「痛っ……。あんた……冗談でも、言っていい事とそうじゃない事が…あるでしょ」

勇者「……怪我人ひっぱたくなんて、最後までお前らしいな」


魔法使い「『最後』なんて言うなっ!!」

悲鳴に似た叫びが、揺れの収まった広間に響き渡る。
声帯が裂けそうなほどの、悲痛すぎる声。
感情を隠さない彼女にしても、これほどまで取り乱すのを勇者は見た事が無かった。


しん、と静まり返った空気の中。
数拍遅れて、嗚咽が聞こえてきた。

魔法使い「…ねぇ……お願い、だから……一緒に……逃げようよぉ…」

勇者「………それだけは、ダメなんだ」

涙を見せた彼女にも、勇者は譲らない。
意固地になっているという訳でもなく、ただ、淡々と……何かを受け入れているかのように。


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