696:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/12(木) 21:53:29.32 ID:X+RsRxlyo
あたしが妹ちゃんの本当の想いを聞きあいつを呼び出し、結果として長い片想いを解消したのはクリスマスの日だった。
妹ちゃんが帰った後、あたしは何も考えずひたすらあいつに甘えた。こんなのあたしのキャラじゃないのに、あいつにキスされ髪を撫でられてただ好きという言葉だけを口にしていた。
でもあいつは受験生だあたしはあいつを適当な時間に家に追い返した。あたしのせいであいつの受験に失敗させる訳にはいかなかったから。
自室で甘い余韻に浸っていたあたしの感傷は、鋭く鳴り響いた携帯の着信音に邪魔された。あいつからかな。
でもその電話は妹ちゃんからだった。
『よかったね、委員長ちゃん』
妹ちゃんは言った。
「ありがとう妹ちゃん。やっとあいつと結ばれたよ」
あたしはきっと蕩けるような声を出していたに違いない。
『うん』
妹ちゃんは続けた。
『今度はあたしから話があるんだけどいい?』
「あ、うん」
正直あたしはもうここで止めたかった。あいつが妹ちゃんではなくてあたしを選んだ。そして妹ちゃんはあいつには未練がない。もうこれでいいのではないか。
でもあたし自身が始めたゲームはこんな都合のいいところで終わってはくれなかった。
『今日ね、久しぶりにお兄ちゃんと会って仲直りした』
「よかったじゃん妹ちゃん」
『でもね、お兄ちゃんはまだ妹友ちゃんのこと気にしてる。あたしとは普通のいい兄妹になろうって』
「そうか」
あたしは気を取り直した。妹友ちゃんが仕掛けたこのゲームに反撃しようと妹ちゃんを誘ったのはもともとあたしだ。自分が想いを遂げたからといってここで止めるわけにはいかなかった。
妹ちゃんとお兄さんが結ばれるまで続けなくてはならないのだ。
『それでね、妹友ちゃんから鎌倉に初詣に行こうって誘われたの。お兄ちゃんと三人で』
ありえる話だった。もともと妹ちゃん狙いの妹友ちゃんがいつまでもお兄さんと二人きりで満足するはずがない。
「じゃあ、あいつの次はお兄さんの目を覚まさそう。お兄さんはまだあんたがあいつと付き合ってると思ってるんでしょ?」
あたしは自分勝手なことに本心ではもうこのゲームをリタイアしたかったけど、さっきあれほど協力してくれた妹ちゃんを突き放すわけにはいかなかった。
「うん。先輩と別れたことはまだ話してない」
妹ちゃんはあたしの次の指示に期待しているようだった。あたしはため息を押し殺し次の作戦を提案した。
「初詣の時にあいつと一緒に同じ場所に行くからさ、お兄さんとあんたはあたしたちが一緒にいるところを目撃して」
あたしは妹ちゃんに指示した。
『わかったけど、そうするとどうなるの?』
妹ちゃんがたずねた。
「あんたは彼氏に浮気された傷心のヒロインになるのよ。お兄さんが見逃せないくらい傷つき助けを求める女の子にね」
『・・・・・・お兄ちゃんには妹友ちゃんがいるんだよ?』
妹ちゃんは疑問を呈した。
『いい兄貴としてあたしを慰めるだけなんじゃ』
「そんなのやってみなきゃわからないよ。まあ、それで駄目でも次の手を考えるからさ。あんたは逐一現在地と到着予想時間をあたしに密かにメールしなよ。できる?」
『うん、やってみる』
元旦の昼、作戦は予定どおり決行されたが想定外の出来事が起きた。あいつにもあたしにも今では関心のないはずの妹友ちゃんがあいつとあたしが寄り添って手を繋いでいるところを目撃し、お兄
さんに怒鳴り散らすくらいにパニックに陥ったというのだ。
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