過去ログ - 妹の手を握るまで
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800:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/01/17(火) 22:25:00.30 ID:IpfYatZ3o
小学校も中学年になるとそろそろ早熟な同級生の女の子は男の子の噂を始めるようになったけど、当時のあたしにはまだ全然実感できない話だった。

その頃お兄ちゃんは中学受験をして私立の中高一貫校(それも男子校)に合格した。
その学校は全国的に知名度が高いわけでもなかったけれど、あたしたちが暮らしている県内では上位に入る学校で偏差値もそれなりに高かった。

その中学の制服は胸に金のエンブレムが刺繍された普通のブレザーだったけど、近所の公立中学のようにジャージ姿で登校している男子たちに比べるとその制服に身を包んだお兄ちゃんはすごく大人びて格好よく思えた。
あたしは制服姿のお兄ちゃんを間近にすると胸がときめいてお兄ちゃんの顔を直視できなかったことを今でもよく覚えている。


お兄ちゃんの学校は電車で1時間以上通学に時間がかかったので、お兄ちゃんとはこれまで以上に話をすることはなくなった。
同時にお母さんがもといた会社より大分小さな出版社に入社することが決まり、我が家は再び両親が共に多忙な共稼ぎ家庭に戻った。


あたしはもともと家事は苦手ではなかったので(ただし料理は除く)、仕事が忙しいお母さんに代わって掃除とか洗濯を引き受けるようになった。
家事自体は負担ではなかったけれど、帰宅後、家で一人きりで過ごすのは気が滅入った。
家事をしている間は気が紛れるのでまだよかったけど、一通り家事が終わるとあとは食事して寝るだけだ。食事は大概近所の大衆食堂とかおそば屋さんの出前かコンビニのお弁当だった。

お兄ちゃんは片道1時間半かけて学校から家に戻ると、自分の分の夕食を持って部屋に篭もってしまうようになっていた。
学校でパソコン部に入部したお兄さんは、お母さんを言いくるめて自室に自分専用のパソコンを買ってもらいインターネット回線まで繋げてしまったのだ。


多分滅多に帰宅しないか帰宅しても深夜になる両親となかなか会えないあたしは、寂びしかったせいか帰宅した制服姿のお兄ちゃんに会うのがその頃の唯一の楽しみだった。
帰宅してもあたしにはろくに口をきいてくれないお兄ちゃんと会えるこの短い時間をあたしは心待ちにするようになった。

お兄ちゃんが自分の鍵で自宅の玄関を開けている音を聞きつけると、掃除していても洗濯していてもとりあえず玄関ホールに行き、その床を掃除する振りをしながらドアを開けるお兄ちゃんにおかえりなさいと声をかけた。
おにいちゃんもただいまともそもそ口にするだけ。それでもそれだけが変化に乏しい自宅で過ごしているあたしにとっては唯一と言っていい楽しみになっていた。


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