過去ログ - 土御門「忘れたかにゃー、インデックス。オレって実は天邪鬼なんだぜい」
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◆sk/InHcLP.
[saga sage]
2012/01/26(木) 23:39:52.71 ID:xQwpJrUv0
つまり、魔術師がコマンドとして用いている呪文など、始めから言わせなければ良いだけ。つまり、魔術師が生命力から精製する魔力など、始めから作らせなければ良いだけ。
魔術師同士の対戦は、相手の術式や仕掛けられた結界を分析・推量しながら自身もそれを攻略できるだけの攻撃を仕掛けるといった、先の読み合いを交互に行う高度な頭脳戦だ。
しかし、そんな100手も200手も先を読み合う頭脳戦だろうが何だろうが、まず魔術を使えなければ意味が無い。魔術を失った魔術師は基本的に脆いものなのだし。
だから、土御門元春は始めから張っていたワナを用いて敵を排除しているまでのことだった。リスクを冒して、使用できないはずの魔術の力に頼ることになっていても。
「だから言っただろう、ステイル。貴様は馬鹿だとな」
少しだけ顔から苦しい表情を零しながらも、土御門はもっと苦しんでいる魔術師に声をかける。まぁ、多分口から水龍を吐き出しているようにも見える彼は聞いてないだろう。
そうだと分かっていても、土御門は気にしないように淡々と話を続けていく。
「おそらく貴様はこう思っていたのだろうな。『ルーンを刻んだこのマンションは、既に自分の領域だ』と」
土御門は水責めで苦しんでいるステイルの傍まで寄り、水の衝撃で修道服から零れ落ちた何枚かのコピー用紙を拾う。水浸しになった床に落ちていたコピー用紙である。
当然、ずぶ濡れになった紙に書いてある字など読める訳もなかった。先ほどまでの業火は、通路を支配する水に消火されたかのように既に跡形も無く消失していた。
「しかし、実際はどうだ? 領域はオレの一手だけで簡単に変わった。結果、貴様は炎を失い、オレは地の利を得たことになった」
ペラペラと自分が張ったコピー用紙の残骸を見せつけられたステイル=マグヌスは、また一つ自身の失策に気がつく。既に大きく開かれていた目が、さらに開かれた。
「十分警戒していたようで、その実、貴様は安心していたのさ。この土御門さんが魔術を使えないただの木偶の坊だと高をくくってな」
しかし、ステイルは動けない。彼には物事を考える余裕も、ましてや魔力を精製する余力などなかった。ただ襲い掛かってくる水の勢いに身体も心も折られそうになる。
こうなってくると、流石の土御門も何か思うところがあったのか、軽く呪を唱えて放水の一点集中を解き、ステイル=マグヌスを解放する……はずも無かった。
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