630: ◆tUNoJq4Lwk[saga]
2012/01/17(火) 20:53:06.31 ID:cLE8yXD4o
彼女は何かを期待してその公園に来たわけではない。
ただ、まったく期待していなかったといわれれば嘘になる。
再来週から学習塾に通う予定になっているので、こんな風に放課後にブラブラ歩くことは
できなくなるだろう。
だからこの時間を有効に使いたいと彼女は思っていた。
だが何も思いつかない。
そもそも、学校帰りに何かするという発想自体、これまでの彼女にはなかったことだ。
本当は、友達とどこかへ遊びに行きたいとも思った。
けれども、病気がちであまり人と接したことのなかったほむらにとって友達を作る、
という行為は高いハードルであった。
今のところ、鹿目まどか以外との同級生とほとんど話もできない状況である。
そんな彼女が色々考えた末、天気もいいので風景のデッサンでもしてみようという結論に達した。
室内で生活することが多かった彼女にとって、外で過ごす時間というのは貴重なものだ。
そして外に出れば、家の中では出会えないことに出会えるかもしれない、などと思いながら。
公園内を歩いていると、不意に見覚えのある人物が目に入った。
日本人の中では比較的大柄な男性。
学生服を着ているが、高校生には見えない風格(おもに髭とサングラスが原因だろう)。
ずいぶん疲れたような様子でベンチに座り込んでいる。
(声をかけようか)
彼女は一瞬躊躇する。
(迷惑じゃないかな)
不安が頭をよぎる。
今までもそうだった。なんでも悪い方向に想像してしまい、心が前に進まない。
(でも……)
胸が高鳴る。
「播磨さん?」
気が付くと、声が出ていた。
「暁美か」
こちらの様子に気付いた播磨拳児はすぐに、彼女の苗字を呼んでくれた。
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