過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」 U
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3:【1/6】[sage saga]
2011/12/13(火) 16:07:17.03 ID:6WSLdOzoo
闇霊使いの少年が「町」から家へと帰り着いてから、次の夜――すなわち次の活動時間。
(着いたか……)
ダルクは家を出て森の奥へ進んだ先にある、広い湖へ足を運んでいた。
その手には、町で買ったばかりの水がめの取っ手が握られている。
となれば当然ここに来た目的は、生活に必要な水の調達に他ならない。
「……」
ダルクにとってこの泉には、浅からぬ因縁があった。
茂みの陰から緊張した面持ちで、用心深く泉の様子をうかがっていく。
(よ、よし。今夜はいないようだな……)
波紋一つ立たない閑けさを確認すると、ダルクは抜き足差し足でほとりへ近づいていった。
以下回想。
数日前の夜、この泉にはハダカの女の子がいた。
ダルクはその女の子――水霊使いエリアが水浴びしている様を、半ば偶然にものぞいてしまった。
直後、彼女の使い魔によってその場で昏倒させられたダルクだったが、
その後はエリアの家に運ばれ、エリア本人から献身的な看護を受けたのだった。
そこまでは良かったが、寝込んだダルクが次に目覚めたときにハプニングは起きた。
エリアの使い魔とのいざこざもそうだったが、問題はその後。
何を血迷ったか余計な気遣いを起こし、イスで眠っていたエリアを抱え、ベッドへ運んだのだった。
その時エリアが目覚めたタイミングと、ダルクのいた位置が最悪だった。
それは第三者が見れば、あたかもダルクが無防備な女の子に悪質なイタズラをしかける直前といった構図。
枕を抱きしめ、ベッドの上で後ずさるエリア。パニックになるダルク。
満足に弁解も謝罪もできず、ダルクはそのままエリアの家を飛び出してしまった。
つくづく誤解を招く別れ方だったと後悔せずにはいられない。
そうして――そのまま今に至るまで、互いに顔は合わせていない。
以上回想終わり。
エリアの家は、この泉からすぐ近くにあった。
夜更けとはいえ、前回と同じように当人と鉢合わせしてしまう可能性は十分にある。
ダルクはどちらかというと、この泉に来るのは乗り気ではなかった。
謝らなければ、きちんと誤解を解かなければとは思う一方で、
自分がエリアにした仕打ち、彼女の怯えた表情を思い浮かべると、いま一歩足を踏み出せなかった。
エリアとのけじめをつけるには、まだ時間を置いておきたかった。
しかし、越したばかりのダルクの家にはまだ飲み水がなかった。
一応町で購入した小瓶の飲み物はあるが、なけなしのお金で買った貴重な物をおいそれと飲むわけにはいかない。
そうでなくとも水は生活に不可欠なもの。
常に家の中に置いて然るべきで、備えは自由に動けるうちに済ませたほうがいい。
そしてこの泉は、ダルクの師が出立の際に教えてくれたスポットの一つ。
地図による漠然とした位置しか教わらなかったが、そこは住まいから最も近くにある安全な水場とのこと。
外の世界に出たばかりのダルクは他の場所を知らず、しばらくはどうしてもここを頼らざるを得ない。
というわけで背に腹は変えられず、ダルクは起きて早々苦い思い出の地へおもむいたのだった。
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