過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」 U
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628:【1/2】[sage saga]
2013/02/02(土) 16:05:50.24 ID:40diepZ4o
「うぐひひひひ! もう終わりか?」
鳴り止まぬ回転ドリルの高音に、コザッキーの声が紛れる。
「よくぞ逃げずに戦った! おかげで手間が省けたぞぉ!」
ギコは肩で息をしながら、口の端からよだれを垂らしていた。
全身のあちこちには擦り傷ができ、アーム攻撃を捌いた手足にはアザのようなものも浮かんでいる。
ギコは身体能力こそ売りだったが、もう残りの体力は吹けば消し飛ぶほどしか残っていなかった。
しかしどれだけ敗勢が色濃くなろうとも、ギコには逃げたり降参するといった選択肢はなかった。
身体は急成長を遂げても、その精神年齢は、まだ進化する以前のギゴバイトの外見相応。
もはや当初の動機を忘れ、負けず嫌いの性分が意地を張り通そうとしているようにもみえる。
いずれにせよ、とにかくギコの徹底抗戦を貫く姿勢は崩れなかった。
それを確かめ、コザッキーの笑みがさらに広がる。
普通の野生モンスターなら、これだけ力量差を見せ付ければ十中八九逃走するところ。
こんな時のために追跡手段もいくつか用意していたが、相手が逃げないのなら何ひとつ無駄に使わずに済む。
無駄なのはガガギゴの方である。無駄なあらがい。無駄なちから。無力!
「うぐひひひひっ、無力の証明だあっ!」
C字のアームがパクパク開閉し、『G・コザッキー』の車体がずいと距離を詰めていく。
接近してアームの命中率を高め、次の攻撃で一気に決めにかかる態勢だった。
対するギコも残った力を振り絞り、身を屈めて最後の攻撃へと備えた。
策も何もあったものではなく、もはや捨て身特攻の覚悟にありったけの闘志を注ぐ。
狙いはロボの最上部、吹きさらしの操縦席にいるコザッキーただ一点。
「……」
両者が間合いを確かめつつ、最後の一撃のタイミングを見計らった、その――
その間際。
「ギコ!」
石つぶてが二、三、コザッキーの操縦席にパラパラと投げ入れられた。
「あたっ、なんだぁ!?」
頭に一石コツンと的中したコザッキーが、左45度を振り返ってその姿をみとめる。
5メートルほど離れた地点に、どこからか現れた少年が一人。
石を片手に持っており、何やら口を動かしているのが見えた。
何か叫んでいるようだが、コザッキーからはすぐ右隣の回転ドリルの音にかき消され、全く聞こえない。
しかし少年はコザッキーの方を見上げていた。
石を投げつけて何か言葉を発している様子をみると、おそらく文句や非難を浴びせているのだろう。
コザッキーはフンと鼻を鳴らし、不機嫌そうにダルクを見下ろす。
騒音に起こされた森の原住民の言葉などに、耳を貸す必要はない。
「邪魔をォ、するな!!」
アームを一本使い、少年の方へ突き入れる。
瞬発力が及ばなかった少年は、哀れコザッキーが実験で使う木人のように軽々と吹き飛んでしまった。
まるで問題にならない。
「さて! ……ん?」
ところが問題はその後だった。
横槍を入れた少年にかけた時間はわずか三秒足らずだったが、コザッキーが前へ向き直ったそのときには。
「……どこにいった?」
ガガギゴの姿が消えていた。
慌てて前後左右を素早く見回す。
『G・コザッキー』は地面に接地したドーム形状のため、頂点から見下ろせばどこにも死角はない。
なのに見当たらない。
ついさっきは今にも襲いかかろうとする格好をしていたのに、突然雲隠れしてしまった。
この機体のどこにも接近しておらず、かつ姿が見えないということは……。
「おのれ逃げおったか!?」
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