過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」 U
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629:【2/2】[saga]
2013/02/02(土) 16:06:35.38 ID:40diepZ4o
『G・コザッキー』のアームに吹き飛ばされたダルクは、茂みの中へ背中から突っ込んだ。
群生する野草に重たいものがガサリと放り込まれる音、同時にそこにいた小虫が何匹か飛び去っていく。
「いつつ……」
不安定な仰向けから起き上がるのに四苦八苦のダルク。
茂みがクッションとなり大きな衝撃はなかったものの、突きを直接受けたみぞおちは痛む。
傍目から見るとそこまで大したことないように思えたが、あのアームは予想を上回るスピードだった。
避けられるものなら避けたかったが、とっさに両腕で顔面を守るぐらいしかできなかった。
よくあんなものを幾度もいなしていたものだと、ダルクは身をもってギコの身体能力を思い知る。
『G・コザッキー』は、そのギコが苦戦する相手だ。
武器も持たない今のダルクでは、到底かなうはずもない。
しかし厳密に考えれば、今ギコが戦っている相手は『G・コザッキー』そのものではない。
それを駆るコザッキーである。
付け入る隙があるとすれば、巨大マシンの方ではなく、操縦者のコザッキーにある。
他人の思考や心理を探るのは、火力に乏しい闇霊術で戦うダルクにとっては基本分野だった。
回転ドリル。
『G・コザッキー』の右腕に搭載された主力武器である。
ダルクの常識ではあまり馴染んだ物ではないが、あれに突かれれば穴が空くくらいのことは知っていた。
その威力や凄まじく、金属の硬度次第ではそこらの岩石にも簡単に穴を開けられる代物だ。
あんなものを生物に食らわせようものなら、たちまち鮮血飛び散り致命傷のダメージを与えることであろう。
ところが今回この武器は、コザッキーの目的にはそぐわないものだった。
なぜならコザッキーの目的は『ガガギゴの捕獲』であり、対象を無闇に殺傷してしまっては本末転倒だからだ。
大怪我を負わせたガガギゴを手に入れても、その後の実験、研究には支障をきたすに決まっている。
だがそれは左腕部のハンマーにも同じことがいえるのではないか。
否、ハンマーはあくまでも打撃である点で相違する。
仮に攻撃が命中したとしても、対象の原型を留めやすさでははっきりドリルより勝るだろう。
ハンマーを振り下ろすことと、ドリルで突くことは意味合いが違う。
現にダルクが観察する限り、『G・コザッキー』には一度もドリルによる攻撃が無かった。
あれだけ回転音高く響かせているにも関わらず、そもそも攻撃する意思がない。
位置も、コザッキーがいる操縦席のそばで固定されたままである。
攻撃しないにも関わらず、その脅威をアピールする――。
その理由を探ったとき、ダルクの違和感は一本道に解消された。
あのドリルは攻撃手段ではなく、防御手段だったのだ。
まずコザッキーの操縦席は、ガラスも何もない吹きさらしである。
敵が『G・コザッキー』の有する兵器を突破してきた場合を考えると、割りあい危険な構造をしている。
万全を期すには、何かで守らなくてはならない。
それがこの場合、回転ドリルなのだ。
つまりこれ見よがしに音を立てて威嚇することで、捕獲対象の接近を抑制していたわけだ。
実はいままで常に操縦席近辺に留まっていたのだが、アームとハンマーによる連撃でうまく迷彩されていた。
離れた位置で傍観していたダルクだからこそ、その意図を見透かすことが出来た。
ではそれが分かったところでどうするか?
コザッキーの注意を引きつつ、余力のあるギコに「ドリルは攻撃してこない!」と伝えるのだ。
結果は、いま目の前で展開される。
「なぁっ!?」
コザッキーの悲鳴にも似た驚きの声と同時に、ギコが回転ドリルの陰から躍り出た。
これまで鉄壁と思い込んでいたその位置こそ、意識から外れた盲点となる――!
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