過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」 U
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8:【6/6】[sage saga]
2011/12/13(火) 16:17:14.57 ID:6WSLdOzoo
ディーの襲来に、ギゴバイトの闘争本能が呼応したらしい。
ギコはダルクに食い込んだトゲを引き抜こうと、身をよじるような動きを始めた。
「ぐっ……い、今まで、すまなかったな」
その額に玉汗が浮かぶ。呼吸も荒くなり始める。
にも関わらず、ダルクは気が気でならない様子のディーに、周囲警戒に戻るよう強く合図した。
そうして間近のギコに訥々と語りかける。
「これで……うぐっ……お前との件は、水に流してはくれないだろうか……?」
これはダルクなりの、ギコとのけじめのつけ方だった。
ダルクは新居の近隣に住むエリアと、いずれは(下心ナシに)仲良くなりたかった。
であれば、彼女の使い魔といつまでも揉め事を起こしているわけにはいかない。
また、単純にギコとのやりとりに留まらず、これはダルクの決意表明でもあった。
『闇』は町で忌み嫌われる。
それを身に染みて感じたあとだからこそ、せめて自分の住まいの周りでは、不和を生じさせたくない。
(ここで……生活していくんだ……)
しかし、血を見たギゴバイトはますます興奮し、なおも暴れ、引っかき、噛み付こうとする。
その仕草が、まだ道理が分からない子供であることを強調させ、主人への依存心を覗かせた。
「はは……情けないが……オレも頑丈じゃない。これ以上の落とし前は勘弁してくれ」
ダルクが右手に握った杖で、地面に引いた線を結びきる。
ちょうどギゴバイトの足元に描かれた模様は――陣。
一つの円形の中に、二つの正三角形を上下に重ねた魔方陣。
下準備が仕上がると、ダルクは杖に意識を集中させ、自らの魔力をこめた。
そして霊力が十分に満ちるや、瞬間的に強く息をついて霊術を発動させる。
「ふっ!」
闇霊術――『六芒星の呪縛』。
魔方陣と闇の力で、描かれた円の上にいる生物の動きを封じこめる術。
本来はさらに二重に円を囲み、空いたスペースに特殊な術式の文字を書かなければらないが、
ギゴバイトのような低級のモンスター相手には即席の簡易方式でも十分効果がある。
六芒星が杖に共鳴して紫色のオーラを上げると、果たしてギゴバイトの動きはみるみるうちに鈍くなった。
ギコはダルクの腕から剥がれると同時に、何かに押さえつけられたかのように魔方陣に張りついた。
ギゴバイトの苦しそうな、そして何やら不満そうな唸り声が湖畔に響き渡る。
「ぐっ……つつ……」
ダルクは安全を確かめると、どさりとギゴバイトの隣に尻餅をついた。
腕に深く食い込んでいたものが急に離れたので、たちまち衣服に赤黒いものが滲み出していく。
本来負う必要はなく、ともすればまるきり無意味なケガ。
自己満足なのは分かりきっていたが、少しでも事態が好転することを望んで被った痛手。
ダルクは、たまに自分は利口なのか馬鹿なのか分からなくなるときがあったが、ちょうど今がその気分だった。
「何やっているんだろうな」
その時、ディーが三度ダルクの元へ舞い降りてきた。
行ったり来たり忙しい使い魔だったが、それも今回で終わりのよう。
ディーの羽ばたきは、「敵意ないもの・未確認のものの接近」を示していた。
「ギコ君! ……ダルク君!!」
外の世界に独り立ちして初めて聞いたヒトの声が、遠くダルクの耳に聞こえた。
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