過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」 U
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7:【5/6】[sage saga]
2011/12/13(火) 16:15:49.28 ID:6WSLdOzoo
 
『申し訳ありません、せめて湖の中であれば、私も打つ手はあるのですが……』
 
 泉の精霊のすまなさそうな声に、ダルクは口元を綻ばせて首を振る。
 
「ありがとう。だがここは自分で何とかするさ」
『どうかお気をつけて』
「ああ、大丈夫だ」
 
 ダルクはギゴバイトと向き合い、右足を一歩引いた。
 相棒のディーの位置を確かめ、杖の後端を地面につける。
 対峙する爬虫類族モンスターと闇霊使いの少年。プラス彼の使い魔のコウモリ。 

 泉の精霊はもはや戦いは避けられないと知るや、
 
『私はエリアを起こして参ります!』
 
 と言い残し、音もなく一瞬で水の中に溶けこんでいった。
 聞き捨てならぬ言葉に慌ててダルクが振り返る。
 
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 大丈夫だ、今エリアに会うのは――」
 
 それが均衡を破るきっかけとなった。
 ギゴバイトは唐突にわめき声のような雄叫びをあげ、一直線にダルク目がけて突進した。
 キバ、ツメ、間接部のトゲがギラリと光り、瞬く間に距離を縮めていく。
 
「ディー!」
 
 杖を地面に引きずるダルクは、空いた方の片腕を斜めに下げた。
 ディーは土壇場でのダルクの指示に戸惑う。
 それは「退け」「周囲警戒に戻れ」の合図。この危険が迫っているときに。
 
「いいから!」
 
 ダルクが言い放つと、ディーは素早く飛び立っていった。
 岸辺に取り残されたダルクだったが、その足は動かない。
 ギゴバイトの勢いであれば、引きつけて真横にかわせば盛大に湖に突っ込みそうなもの。
 しかしダルクは腰を落とし、左肩を突き出して歯を食いしばっていた。ギコのタックルを迎え撃つ態勢だった。
 
 当前ながらデス・カンガルーの真似事などできる訳がない。
 また物理攻撃を受け止められるほど、肉体の守りに自信があるわけでもない。
 ダルクの腹の内は、ギゴバイトが現れたときから決まっていた。
 
「うぐっ!」
 
 瞬間、鈍い打撃音があがり、それはすぐに湖の静寂に吸い込まれていった。
 
 たまらず主人を振り返るディー。わずかに困惑した動きを見せるギコ。
 鋭い痛みを苦笑いで覆う隠すダルク。

「……はは……」

 ぽたぽたと滴り落ちる鮮血。 
 
 ダルクの左肩から前腕にかけて、ギコのツメ・ヒザのトゲが食い込んでいた。
 ローブの下に防具など仕込んでいるはずもなく、生身で受けたも同然だった。
 
「そ……相当怒ってたんだな……これはなかなか痛いぞ……」

 主の危機に、たちまちディーが馳せ参じた。
 よくも主人をと言わんばかりに、その一つ目に魔力を注ぎ始める。
 得意技『ダーク・ボム』をギゴバイトに撃ち込むつもりだ。
 すぐに「やめろ」と静かにそれを制するダルク。
 
「オレは外の世界に、争いをしにきたわけじゃないんだ……」




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