過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」 U
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85:【1/3】[sage saga]
2012/01/19(木) 16:00:19.49 ID:xhi2Hb1Oo
 長いはずの夜も、気がつけば折り返しに差し掛かっていた。
 
 エリアの家は一軒家で、ダルクの家とよく似たデザインの木造建築だった。
 この森林区域を専門とする大工でもいるのだろうか、と思索するダルク。
 
 もっともエリアの家は、泉のすぐ近くにあるせいか、湿気――というより瑞々しさを感じさせ、
怪しげな雰囲気を醸すダルクの家よりも、かなり違った印象を与えた。
 家の外観によって、その住人の気質が知れる節があるのかもしれない。
 
「どうぞ」
 
 エリアが施錠を解き、家の扉を開いてみせる。
 ダルクは使い魔のディーを外に放すと、いささか緊張気味にエリアの家に入った。
 知らない家に踏み入るだけでも恐縮なのに、それが可愛い女の子の家とくればもう――
 
「どうしたの?」
「い、いや」
 
 一度ここで世話になったことがあるから分かるが、室内もやはりダルクの家と似ていた。
 広い居間の一室から、いくつかの小さなスペースが枝分かれしているような構造だ。

 通された居間にははっきりと既視感があり、ダルクが横たわったベッドも目に入った。
 前回は気がつかなかったが、ベッドの一部にはなにやら巻貝のようなデザインがなされており、
その他にも各所に『水』を彷彿させる趣向が垣間見え、エリアの好センスがうかがえた。
 
「――はい、どうぞ」
 
 テーブルに着席した後、エリアは奥から二人分の飲みものを持ってきてくれた。
 そのコップからは湯気が立っているので、飲めばきっとぬくもりが胸にしみこむに違いない。
 
 ダルクは礼は言ったものの、しかしすぐに手をつける気にはなれなかった。
 何より先に、彼女に例の一件について謝らなければならない。
 
 しかしエリアはダルクのことを覚えていながら、怒ったり怖がったりする様子はみられない。
 それどころかあんなことが起こった後でさえ、くだんの張本人を家の奥に通すというのだから、
もしかしたらとっくに許してくれているのかもしれない。

 だが、ダルクの決意は揺るがなかった。
 
「エリア。ごめん」
 
 甘えてはダメだ。けじめをつける機会は今しかない。
 今を逃せば、誤解を招いたあのときのエリアの怯えた顔は、一生自分の中で消えることはないだろう。
 
「? 何が?」
 
 エリアがコップに口をつけながら、きょとんした顔を見せる。
 
「初めて会ったとき、その……誤解を招くようなことを、してしまって」

 ダルクはテーブルに額をぶつける勢いで頭を下げた。

「本当にすまなかった!」

 不意に訪れる沈黙。
 時間にしてほんの数秒だったが、ダルクにしてみれば堪らなく長いひとときに感じた。
 



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