2:JK[saga]
2011/12/14(水) 02:08:47.25 ID:7vHzEqmB0
月夜叉を視認出来るのは、
極一部の才能を持っている者……、
否、ある特定の条件を偶然にも満たした者だけである。
人の子の眼に己の姿が写る事が無かろうと、月夜叉に不満はない。
寧ろ、人の子と己の道筋が交錯してはならぬものだと、感じている。
されど、運命の悪戯と言うべきか、
極稀にだが月夜叉と関わってしまう人間が現れてしまう事も決して少なくはない。
その人間の一人こそ、月夜叉が知り合ったまだ幼子に過ぎぬ少女。
偶さか月夜叉を視認したあの少女だった。
故に月夜叉は駆けるのだ。
少女と邂逅を果たすために。
ある程度駆けただろうか、
月夜叉は常時少女との逢瀬の場としている遊戯場に辿り着く。
約束の時間より幾分かは早いはずだったが、
少女は既に遊戯場の長椅子に腰掛けていた。
『すまない。私が遅れたか』
月夜叉も遊戯場の長椅子に悠然と腰掛け、己を待っていた少女に言葉を浴びせた。
されで、口を開いてはいない。
声帯を震わせずとも、空気を振動させずとも、
月夜叉は言葉を思念として人の子に届ける事が出来る。
斯様な異常な状況にも関わらず、
既に慣れ切ってしまっているのか、
少女は多少喜悦の表情を浮かべ、小さく己の舌を出して声を発した。
「ううん。あたしがちょっと早く来ただけだから」
『左様か』
月夜叉は呟きながら、少女の顔を無表情に覗き込む。
少女の名は真崎雪と言うのだと過去に聞いた事がある。
雪は御髪を三つに編んだ童顔であり、
贔屓目に見ても幼子にしか見えないが、彼女は既に齢十五を超えているとの事だった。
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