89:SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b)[sage saga]
2011/12/23(金) 03:56:19.36 ID:c4Axoe8J0
「うわッ……!」
杏子の左足を、凶々しい光を放つ刃が切り裂いた。
体制を崩した杏子に、さらに激しい魔女の攻撃が浴びせられる。
「く……そ」
それでもなお、杏子は驚異的な粘りで凶刃をかわし、弾き返し、反撃のチャンスを伺っていたが、もはや戦いの趨勢は明らかだった。
「踏ん張りが……利かねえと……」
捌き損ねた一撃が杏子の肩を抉る。
「ぐっ!」
あまりの激痛に杏子は槍を取り落としてしまった。
「し……まった……ちくしょう」
杏子は傷口を押さえながら、結界の中心に目を遣る。
魔女―であるはずのもの―は身動き一つせず、こちらを見ていた。
「あんた……いったい……」
うめくように呟く杏子の目の前に、ゆっくりと鎌首をもたげるようにして、ひときわ巨大な刃がとどめを刺すべく迫っていた。
「へっ……。まさか、こんなところで……」
覚悟を決めた杏子の脳裏に浮かんだのは、死んだ妹の笑顔だった。
(思ったより早く、会えそうだね。あたしも……)
祈るように目を閉じた……その時。
杏子は、黄金色に輝く閃光が、自分の身体を包み込むのを見た。
(何……だ?)
ぼんやりとした視界の中で、その光がきらめくたび、魔女の刃は次々と叩き落とされていく。
(ちぇっ……。幻覚を見るようじゃ……もう……)
だが、次に聞こえてきたのは幻聴ではなかった。
「諦めるなんて、あなたらしくないじゃない」
(……?)
「意外にすぐ、借りを返すことができたわね。佐倉杏子」
それは確かに、とても聞き覚えのあるあの声、力強くて暖かいあの声だった。
「いいえ……佐倉、さん」
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