73:>>1 ◆weh0ormOQI[saga]
2011/12/27(火) 22:52:48.82 ID:l5SKq28Z0
続いて声が戻ってきた。
だが、望む名前を滑らかに発声できない。
筋肉の硬直が原因ではない。
途方もない恐怖に心臓を握りつぶされたような感覚。
「ど、こ……? す、すて、い」
光が網膜に射した。
生命の脈動を地表にあますことなく伝えるような、太陽のそれではない。
星と月の瞬きだった。
「すて、いる」
最後に帰ってきた肌の感覚。
人間の皮膚は熱さよりも冷たさを、冷たさよりも痛みを感じる感覚点を多数有する。
つまり人は熱気よりも冷気に対して敏感であり、痛覚にはさらに過敏だ。
しかし女の肌は――――
「……呼んだかい」
「え」
真っ先に、焚火のような心地の良い熱を、全身で享受した。
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