29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/01/09(月) 16:46:44.73 ID:Szi3hrtDO
「さあ記念すべき初陣じゃ!」
(当人の感覚では)ばっちりと仕上げた履歴書を抱き抱え、繁華街にある喫茶店へと駆けていく魔王。
証明写真機に悪戦苦闘しておろおろしたり、財布を買うために右往左往したり。
はたまた、候補となる働き先の多すぎる繁華街でしかつめらしく唸ったり。
様々な苦労を経て、魔王は今、面接デビューを飾ろうとしていた。
「いらっしゃいませー」
「ここの責任者はおらぬか!?」
自動ドアの近くにいる店員に訊く。
何名様ですか、とでも続けようとしていた店員は、戦場で名乗りを上げるような声に驚いた顔を見せる。
「しょっ、少々お待ち下さい」
「……しまった、気合いを入れすぎたやもしれぬ」
外見からは想像できない威厳を漂わせる言に従い、慌ただしくカウンターの奥に消えていく店員と、威圧してしまったことを反省する魔王。
ややあって、
「お待たせしました」
カウンターの奥から店長と書かれた札をつけた男が出てきて、丁寧に謝罪した。
魔王は鷹揚に頷いて返すと、
「わらわをここで雇ってはくれぬか」
単刀直入に切り出す。
「へ……?」
泡を食って、刹那あんぐりとした店長であったが。
「あの……お嬢ちゃん? 親御さんはいるかな?」
すぐに平静を取り戻し、柔らかな物腰で尋ねかけてくる。
「おらぬ」
「そ、そうなんだ、あはは。困ったなぁ……」
見た目小学生のような魔王と、店長が対峙するという不思議な構図は、店内の関心を引いていた。
彼方此方でひそひそとした話し声が生まれている。
「履歴書はきちんと持ってきておるぞ」
両腕で大切そうに抱えていた履歴書をワンピースの白い布地から離し、ふふんと自信ありげに見せつける。
「あー、うーん……。じゃあ、面接……してみようか?」
「おお、もちろんじゃ」
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