107:にゃんこ[saga]
2012/02/11(土) 19:21:45.48 ID:5i+gli3V0
不意に梓が私と繋いでいた手を名残惜しそうに離した。
どうも憂ちゃんと純ちゃんに、私達が手を繋いでる事に気付かれたかららしい。
唯に気付かれた時にはあんまり気にしてなかったみたいだけど、
同い年の親友に自分のそんな姿を見せるのは、流石の梓も少し恥ずかしいみたいだ。
頬を少し染めながら、梓は純ちゃん達の近くの席に腰掛けた。
私は梓が席に座るのを見届けてから、空いている席に足を進める。
最後に空いていたのは澪の左隣で、唯の右隣の席だった。
皆が気を遣ってその席を空けていてくれたんだろうか。
ちょっとだけ、躊躇う。
らしくなく緊張する。
私はまだ澪に掛けられる言葉を持ってないんだ。
こんな状態で、私は澪の隣で落ち着いて居られるのか……?
椅子の縁に手を置いて、何秒か沈黙する。
でも……、
予想もしてなかった挨拶が、私を包んでくれた。
「おはよう、律。
梓と……、散歩にでも行ってたのふぁ……?」
言ったのは、澪だった。
多分、精一杯勇気を出して、言ってくれたんだろう。
言葉の調子は震えてたし、語尾に至っては噛んでいた。
私が視線を向けると、言葉を噛んだのが恥ずかしいのか、
澪は顔を赤く染めて視線を落とし、私達の中では大柄な部類の身体を小さくしていた。
悪いとは思ったんだけど、私は軽く笑ってしまっていた。
久し振り……、って言うほど前の話じゃないけど、
でも、やっぱり久し振りな気がする普段の澪の姿に、安心出来たからかもしれない。
そうだよな……。
私が澪と何を話したらいいのか分からなかったのと同じくらい、
澪だって私と何を話したらいいのか分かってなかったはずだ。
同じくらい、悩んでたはずだ。
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