125:にゃんこ[saga]
2012/02/15(水) 19:26:19.98 ID:pP9cEDoP0
「ねえ、憂ちゃん……。
唯って奴はすごいお姉ちゃんだよね……。
憂ちゃんの事を大切にしてるし、私達の事も大切に思ってくれてるしさ……。
唯と軽音部をやれて本当によかったって思ってるんだ。
でも、だからって……」
憂ちゃんが唯の真似をする必要なんてない、とは言えなかった。
そんな事、私が言わなくたって、憂ちゃん自身も分かり切ってるはずだ。
私の背中に抱き着いたのだって、
ただ何となく唯の真似をしてみたくなっただけの事だろう。
でも、その心の中には、唯への憧れが少しも無かったとは言い切れない。
外見もそっくりなんだから、
お姉ちゃんみたいな事が自分にも出来るかも、って思う事もあったはずだ。
そういう私だって唯には結構憧れてる。
あいつみたいに素直になれたら、あいつみたいに皆を支えられたら……。
そう思った事は何度もある。
今だってそうだ。
あいつが私の立場なら、今も悩む澪に優しい言葉を掛けてやれる事だろう。
それこそ和が言ったように唯が澪の幼馴染みなら、強く澪の支えになってやれたはずだ。
だけど、澪の幼馴染みは唯じゃなくて私で、
澪の不安を振り払ってやれないのは私の責任でもあって……。
いっそ唯ならどう澪を支えるかを考えれば、もっと話は簡単なんだろう。
唯の真似をしてしまえば、澪の不安を少なくしてやれるはずだ。
ひょっとすると、憂ちゃんも唯の一番近くでそんな事を考えてたのかもしれない。
『お姉ちゃんみたいに誰かを幸せにしたい』って。
でもさ……。
悔しいけど、唯は唯で、私は私で、憂ちゃんは憂ちゃんなんだよな。
私は軽く咳払いをして、話題を変える。
「そういえばさ、憂ちゃんの料理、相変わらず美味しかったよ。
今日の朝ごはんは私も結構頑張ったんだけどさ、
やっぱり毎日台所に立ってる憂ちゃんには敵わないよ。
おみそれしました。私ももっと精進しなきゃな」
「いえいえ、そんな……。
律さんの朝ごはんだって、すっごく美味しかったですよ!
お姉ちゃんも「りっちゃんの料理って、男の料理って感じで美味しいよねー」って褒めてましたよ!」
それは褒められてるんだろうか……。
一応、美味しいと思ってくれてるんなら、まあ、いいけど。
そう思いながら私が苦笑すると、憂ちゃんも私の後ろで苦笑してくれたみたいだった。
私達は唯に憧れてて、魅せられてて、真似をしたいって思う時もある。
でも、真似をしたって、唯みたいに出来るわけじゃない。
私達は私達に出来る何かをするしかないんだろう。
憂ちゃんはそれを私よりも分かってるはずだ。
分かってるから、憂ちゃんは本当に出来た妹になったんだと思う。
お姉ちゃんみたいにはなれないから、別の所で頑張ろうって思ってたんだろうな。
それでしっかりした子になったんだ。
それでも、憂ちゃんの心に不安が無いわけじゃない。
唯が大学に行って、長く唯と離れる事になって、
自分がどうするべきなのか迷っちゃう事もあるんだろう。
だから、唯の真似をしちゃったんだろうな。
唯が居ない場所では、自分が唯の代わりになった方がいいんじゃないか、ってそう考えて。
多分、ほとんど無意識な内に。
それくらい、憂ちゃんと私の心の中では唯の存在が大きいんだ。
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