過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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142:にゃんこ[saga]
2012/02/20(月) 18:09:02.55 ID:5SRVmQT60





聡の部屋でマウンテンバイクの鍵はすぐに見つかった。
予想通りと言うべきか、聡の奴はズボンのポケットの中に鍵を入れたままにしていた。
こういう所、姉弟だな、って思う。
私も鍵をズボンに入れっ放しにしてる事って、結構あるからなあ……。
変な所だけ似てるもんだよな。

あんまり簡単に見つかったのがつまらなくて、
折角だから聡のベッドの下も何となく探してみたら、
何処で手に入れたのか分からないけど、エロエロな本が見つかった。
あの年でエロ本を手に入れるのは至難の技のはずなんだけど、
友達のコネか何かで頑張って入手したんだろう。
頑張ったな、若造。
それはいいんだが、隠し場所はもうちょっと工夫しようぜ、我が弟よ……。
多分、この場所だと、母さんもエロ本を隠してるの気付いてるぞ。

意外にも興味津々な様子のムギと一緒にエロ本を開いてみると、
パツキンのボインちゃんで脚がグンバツのチャンネーばかり載っていた。
言い方が古いかもしれんが、そうとしか言えない写真ばっかだったんだ。
何となく気になって発行日を見てみると、昭和六十二年と記されていた。
すげー古い……。
多分、頑張ったけど、これしか手に入らなかったんだろうな……。
弟の血の滲む努力の成果に、姉として何か泣けてくるぞ……。
勿論、ひょっとしたら単にこういうチャンネーが好きなだけかもしれないけど。

そうだとすると、私に対する悪意を感じないでもないな。
スタイルの良いボインのチャンネーが大好きとか、私への皮肉か。
どうせ私は男の子と間違えられる貧相な肉体だよ。
最近は梓にも胸のサイズで負けそうでマジで辛いんだよ……。
いつもじゃなくていいから、心の底では弟として私を応援してくれんか……。

そう思わなくもなかったけど、それはすぐに思い直した。
よく考えると、私と似たタイプを好みと考えられる方が遥かに困るな。
姉としてはそっちの方が複雑だ。
喜ぶべきなのか、怒るべきなのか、かなり判断に迷うぞ。
隠されてたエロ本が今あるボインちゃん本じゃなくて、
『貧乳お姉ちゃん特集』の本だったりしたら、私はどうすりゃいいんだ……。
そう考えると、聡の好みのタイプが貧乳じゃなかったってのは、逆によかったのかもな……。
いや、貧乳って言うな。

何とも複雑な気分になりながら、私は聡の机の中心にエロ本を置いておいた。
エロ本を見つけた時は、机の上に整理して置いておく。
これが世間一般の礼儀らしい。
漫画で読んだ知識なんだけど、一度はやってみたかったんだ。
……とムギが言っていた。
何つーか、相変わらず知識が隔たってるよな、ムギは。

勿論、私にも別に異論は無かった。
聡の机の上にエロ本を置いてから、私達は名残惜しく聡の部屋を後にした。
名残惜しかったのは、当然だけど最後まで聡が姿を現さなかったからだ。
当然だけど……、仕方が無いけど……、でも、私は心の何処かで期待してた。
ムギも多分、期待してた。
エロ本を見つけた時に限って、都合よくそれを弟に目撃される。
そんなお約束な場面を心の何処かで期待してたんだ。
あるわけないのに、単なるお約束なのに、それでも……。
そんなのにすがり付きたいくらい、私は……。

でも、いつまでもすがり付いてたって、意味が無いって事も私達は分かってる。
だから、未来でいい。
出来る限り近い未来がいいんだけど、遠くたって構わない。
未来、聡が机の上のエロ本を見つけて、恥ずかしさで悶えてくれればいい。
それで私に文句を言いに来てくれれば嬉しい。
せめて、その願いくらいは叶ってほしい。
叶ってくれないと、悔し過ぎるじゃんか……。


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