153:にゃんこ[saga]
2012/02/23(木) 20:13:50.16 ID:vT0us/C50
でも、その期待は簡単に打ち崩された。
私の実家より遥かに大きくて、
執事やお手伝いさんなんかも大勢居るはずのムギの家にも、誰一人居なかった。
それどころか、ムギの家で飼ってるらしいミシシッピ何たらって亀の姿も一匹も無かった。
分かっちゃいた事だけど、
もう本気で私達以外の生き物はこの世界に存在しないのかもしれない。
無音が私の耳に届く。
いや、自転車の車輪の音と風の音くらいは聞こえるけど、そんなの音じゃない。
音だけど、音じゃないんだ。
音ってのはもっと……、そう、他の誰かや他の何かが立てる物音なんだと思う。
騒がしくて、やかましくて、嫌になる事もあるけど、
その一切が消えてしまった今じゃ、ほんの少しの雑音だって懐かしかった。
誰か他者の存在を感じたかった。
でも、そんなに落ち込んでるわけでもない。
事態が良くなったわけじゃないけど、
自分の置かれた現状が分からなかった時よりはずっとマシだと思う。
テストの結果を待ってる時と、テストの結果が出た後って感じかな。
変な例えなんだけどさ。
テストの結果なんて、自分がテストを解いた時点でもう決まってるのに、
テスト用紙が返ってくるまで、いい点であるよう神様に祈るなんて、誰だってやる事だと思う。
私なんか大学受験の時は、結果が出るまで神様にずっと祈ってた。
結果が分からない時ってのは、それくらい変な期待に満ち溢れちゃうもんなんだよな。
だから、同時に不安にもなる。
期待をするから、そうじゃなかった時の心配もどんどん膨らんでく。
それに押し潰されそうになる事もある。
でも、良い結果でも、悪い結果でも、出てしまえばそれは単なる結果なんだ。
最悪な結果でも、出ないよりはずっとマシなんだと思う。
町をずっと回って、ムギの家を訊ねてみて、
少なくとも市内には誰一人居ないのは間違いなさそうな感じになってきた。
嫌な調査結果だけど、そのおかげでこれからの事を考えられるって事でもある。
落ち込んでる暇なんか無い。
それに私には、まだ大切な仲間が居るんだからな……。
負けてられないよな……。
私は微笑んで、ムギにもう一度話し掛けてみる。
657Res/1034.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。