160:にゃんこ[saga]
2012/02/25(土) 19:41:28.27 ID:60mH76PP0
「何だ?
うん、いいぞ。何でも言ってくれよ、ムギ。
肩を揉んでくれるお返しだ。出来る限りのお願いなら聞くぞ」
私はムギに笑い掛ける。
ムギの大切なお願いなら、聞かないわけにはいかない。
ムギには普段からずっとお世話になってるんだもんな。
肩を揉らうお返しじゃなくたって、ムギのお願いなら何でも聞いてあげたい。
ムギは小さく息を吸い込む。
深呼吸してるんだろう。
そのお願いを口にするのを、結構躊躇ってるみたいだ。
そんなに言いにくいお願いなんだろうか……?
まさか、憂ちゃんとの馴れ初めを教えてほしい、とかってお願いじゃないよな……?
そういやムギの誤解も解けてない事だし、そういうお願いもある……のか?
つい変な事を考えちゃった私だけど、
それからムギは、そんな私の考えとは全然異なった真剣な言葉を口にした。
「あのね、りっちゃん……。
私が言う事じゃないと思うんだけど……、
こんな事、私に言われなくたって、りっちゃんなら分かってると思うんだけど……。
でもね……、私の我儘だと思って聞いてほしいの。
ねえ、りっちゃん……。
あの……ね……、澪ちゃんのね……、傍に居てあげてほしいの……。
りっちゃんが傍に居れば、澪ちゃんももっと安心出来ると思うし……。
だからね……」
言葉を止めて、ムギが視線を伏せる。
漕いでいたペダルも止めて、その場……道路の真ん中に自転車を停める。
ムギより少しだけ前に行っちゃってた私も、
自転車を停めて、ゆっくりとムギの表情を覗き込む。
ムギはとても不安そうな表情を浮かべていた。
その表情には「言っちゃった……」って書いてあるように思えた。
ムギが言葉通り、それはムギが言う事じゃない。
ムギに言われなくたって、私にも分かってる。
私は澪と話をするべきなんだって。
傍に居て、また今朝の挨拶程度じゃなくて、
もっと笑い合えるように努力するべきなんだって。
分かってる。分かり切ってるし、実際にも今晩に澪と話そうと思ってた。
そんなの、ムギに言われる事じゃないんだ。
ムギもそれを分かってる。
自分がそれを口にするべきじゃないのかもしれない、って思ってる。
だから、不安と後悔に溢れた表情を浮かべてるんだろう。
私はムギの言葉に腹が立った。
そんな事、ムギに言われるまでもない……。
腹が立って、拳を握って、不安そうなムギに向けて言葉を届けた。
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