244:にゃんこ[saga]
2012/03/16(金) 20:13:17.84 ID:/aEQ2O590
「細かい所が違うこの世界……。
意識して観察してみたら、本当に多くの所が違っていたわ。
校内だけでも何ヶ所もおかしな所があるのよ。
校長室、図書室、司書室、校庭の樹の本数、グラウンド……、
普通なら記憶違いで済ませる所なんだけど、
間違い探しだと考えて探してみると見つけるのは簡単だったわ。
この世界は人が居ないってだけじゃなくて、そのものもちょっとずつ違ってるのよ。
ひょっとしたら、澪はそれに本能的に気付いてたのかもしれないわね」
「澪……も……?」
「深く気付いてるわけじゃないと思うわ。
でも、違和感や空気の違いには人一倍敏感な子でしょ?
だから、怖がってたのよ、澪は。
誰よりもこの世界に気付いちゃったからこそ……。
私だって……怖いもの」
和の言う通り、確かに澪はそういう自分の身に迫る危機だけは敏感に感じ取る奴だ。
それをあの時の私には気付いてやれなかった。
そうか……。
だから、澪はあんなに……。
今なら澪が部屋に閉じこもろうとした気持ちもよく分かる。
生き物が居ないってだけなら、まだ何とか対応しようがある。
でも、世界そのものの存在自体が中途半端で曖昧だなんて、私だって不安になってくる。
最後に一つだけ、和が私に不安そうに訊ねた。
「世界の方が間違っているのかしら……。
それとも、やっぱり私の記憶が間違っているのかしら……。
私は……」
それに対する答えは私も持ってない。
私に出来る事は信じる事だけだ。
私の目の前に居る和と、和との思い出、そして、和の身体の温かさを。
「信じてくれ、和。
私は和の心の中や頭の中までは覗けないけど、
でも、和の記憶が正しいんだって信じてる。
あの樹だけどさ、実は私も小学生の頃に落ちて指を折った事があるんだ。
だから……、和も和自身と和を信じる私を信じてくれよな。
和は間違ってないよ」
私は和の肩を取って真正面から伝える。
和は少しだけ沈黙してたけど、すぐに微笑んで言ってくれた。
「そうね……。
信じるわ、律が信じてくれる私の記憶を。
それに……、元の世界に戻れる希望が無くなったわけじゃないって。
異世界の門云々はともかく……、何か方法はあるはずなのよ。
もしもこの世界が本当に誰かの夢だったとしたら、
その誰かの夢を覚ます事で私達は元の世界に戻れるかもしれないし……。
大体、律の記憶より、私の記憶の方がよっぽど信じられるものね。
律が憶えてる事を私が憶えてないわけないもの」
最後には微笑みどころじゃなく、眩い笑顔になっていた。
どうやら最後はからかわれてしまったらしい。
私はニヤリと微笑んでから、和の肩を揺らして耳元で叫んでやる。
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