243:にゃんこ[saga]
2012/03/16(金) 20:10:31.59 ID:/aEQ2O590
和が辛そうに呟く。
自分の記憶と現実の世界の間に、大きな差がある事に気付かされてしまったんだ。
そんなの私だって嫌だ。
自分の思い出が否定されるって事は、自分自身を否定されるって事なんだから。
だから、私は和がその話題を切り出すより先に言ってやった。
言わなきゃいけなかった。
「だから……、この世界は誰かの夢みたいな物かもしれないって和は思ったんだな」
「いいえ、私はただその可能性もあるって……」
「いや、きっとそうだよ。
この世界……、とりあえず和の言葉からパクって『閉ざされた世界』って呼ぶけど、
この『閉ざされた世界』は和の言う通りなら、
私達の記憶とはちょっとずつ違う世界なんだよな。
あの公園にあったはずの樹が無かったり、
埋めたはずのタイムカプセルが埋められてなかったり……。
私達の世界が完全再現されてるみたいで所々惜しい……って感じか。
夢……だな。
確かに……夢だ。
誰かが心の中で記憶してる風景みたいだよな……」
本当はパラレルワールドって可能性もまだ残ってた。
私達の世界と『閉ざされた世界』は、
細部がちょっとだけ違ってる世界なんだって考える事は出来る。
パラレルワールドの方なら異世界の門か何かで、元の世界に帰れる可能性もある。
本当はパラレルワールドなんだって考えたい。
でも、そうとはもう考えられなかった。
特に昼間、私とムギが見た光景は、異世界の門の先を見たって考えるより、
この夢を見てる誰かの生き物の記憶がふとした拍子に蘇ったって考えた方が説得力がある。
そもそも自分で考えた事だけど、何だよ、異世界の門って……。
もしそんなのがあったとしても、また簡単に通れるようになるもんなのかよ……。
やっぱもう私達は元の世界には戻れないのかよ……。
「……っ」
くそっ!
と言おうとして、どうにか言い留める。
今、そういう事を一番言いたいのは和のはずだ。
だから、和は言ったんだ。
「私達は元の世界に戻れないかもしれない」って……。
和が多分、私なんかよりずっと辛そうな顔をして、口をまた開いた。
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