過去ログ - 律「閉ざされた世界」
1- 20
264:にゃんこ[saga]
2012/03/22(木) 14:07:45.90 ID:uTBomnnF0
「律先輩ったら、女泣かせのプレイボーイなんだからー」


からかうみたいに純ちゃんが笑う。
普段なら言い返したい所だったけど、
鈍感な自分に恥ずかしさが増して来てそれも出来なかった。
いや、本当に恥ずかしいのは、きっと私よりも憂ちゃんの方だ。
おずおずと視線を向けてみると、憂ちゃんが顔を赤く染めながら私を見つめていた。

あー、もう!
何やっちゃってんだよ、私は!
こんなの憂ちゃんに物凄く悪いじゃないか!

私は自分の顔が熱くなるのを感じながら、それでもどうにか憂ちゃんと目を合わせて言った。
今は憂ちゃんとしっかり話をしなきゃいけない時なんだ。
私の恥ずかしさなんて、今はどうでもいいんだ。


「えっと……、ごめんね……。
私ったら全然気付かなくてさ……」


「いえ……。
私こそ年上の人をちゃん付けで呼びたいだなんて、
いきなり変な事を言ってしまってすみません……。
でも……」


途切れ途切れながら、憂ちゃんは自分の想いをはっきり口にしてくれた。
憂ちゃんからそんなに信頼されてるのは凄く嬉しい。
でも、何でだ……?
私はその答えが出せない。
自慢じゃないが、この数日でそんなに憂ちゃんと親しくなる何かがあったなんて思えない。
三年間、それなりの距離感を持って私達は付き合っていた。
友達の妹っていう難しい位置にいる憂ちゃん相手に私は少し戸惑ってて、
多分、憂ちゃんはそれを察して、私と丁度いい距離感で付き合ってくれてたと思う。
けど、今の憂ちゃんは私ともっと親しくなりたいと言ってくれてる。

失礼だと思うけど、私にはその理由が全然分からない。
はっきり言って、本気でお風呂以外に理由が見当たらなかった。
梓には冗談で言ってたんだけど、本気で湯の力が私達を近付けてくれたんだろうか?
そりゃ私だって、一緒に風呂に入ったおかげで若干親しくなれたとは思ってるんだけど……。

流石にその理由まで憂ちゃんに訊いちゃうわけにはいかない。
そんなの失礼過ぎるにも程がある。
だから、今度こそ私はちゃんと憂ちゃんの気持ちを考えなきゃいけない。
あの日の事をもっと思い出すんだ。
あの日、憂ちゃんと私の間に何があったのかを……。

裸の憂ちゃんと抱き合うような体勢になった……、ってのは違うよな。
憂ちゃんは本気で私の事を心配してくれてたし、
ムギの勘違いの事にも気付いてないみたいだった。
となると、あの日、私と憂ちゃんの間であった事と言えば一つしかない。


「ほうかごガールズ……?」


私が訊ねるみたいに口にすると、憂ちゃんの表情がパッと輝いた。
私達の様子を見ていた純ちゃんと和の様子も安心した感じになる。
嬉しそうに微笑みながら、憂ちゃんが話を続けてくれる。


「はい……!
あの日は言ってなかったんですけど……、
恥ずかしくて言い出せなかったんですけど……、
だから、今、言わせてもらいますね……。

律さんが新バンドの……、
ほうかごガールズの事を発案してくれて、私、とても嬉しかったんです。
これでお姉ちゃん達に私達の演奏を聴いてもらえるんだって思うと、凄く嬉しくて……。
それもそのバンドに和ちゃんまで参加してくれるなんて、本当、夢みたいです……!
今更ですけど、本当にありがとうございます!」


憂ちゃんは少しだけ興奮して言っていた。
憂ちゃんが興奮するなんて、よっぽどの事だった。
そうか……。
私は憂ちゃんにそんなに喜んでもらえる事を思い付いてたのか……。
正直、単なる勢いだけの思い付きが、憂ちゃんにそんなに喜んでもらえてたなんて思いもしなかった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
657Res/1034.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice