265:にゃんこ[saga]
2012/03/22(木) 14:08:12.10 ID:uTBomnnF0
大体、それはわかばガールズのためだけに言い出した事じゃない。
何も出来てない自分が悔しくて、
それと私自身もわかばガールズの演奏が聴きたくて、
そんな下心もあって言い出した事なんだ。
不純な雑念や下心に溢れた勢いだけの発案なんだ。
それがこんなに喜んでもらえてるなんて、何だか申し訳ないけど……。
でも……。
それは口にしないでいい事だと思った。
始まりや理由は何であれ、憂ちゃんはそれを嬉しいと思ってくれた。
私の事を信頼してくれたんだ。
だったら、言いだしっぺとしての責任を取るのが、私のせめてもの罪滅ぼしだ。
私はいつも勢いだけの自分に呆れながら、
でも、ちょっとだけ感心しながら、憂ちゃんの目をまっすぐに見つめた。
今度は変な気負いもなく正面から見つめられた。
「ほうかごガールズの事……、
憂ちゃんにそんな喜んでもらえてたなんて、私も嬉しいよ。
ごめんね、すぐに気付けなくってさ……。
その分、私、皆の演奏をしっかり支えるよ。
部活に力を入れてるわかばガールズの演奏に匹敵出来るかは分かんないけど、頑張る。
だから……」
私は正直な想いを口にした。
頑張ろう。
わかばガールズの完璧な演奏を手助けするために、精一杯頑張ろう……!
そんな真剣な想いを込めていたけど、何故だかその言葉は純ちゃんに苦笑された。
持っていたベースを軽くかき鳴らしてから、純ちゃんが私に言った。
「違いますよ、律先輩。
ここはアレですよ?
「頑張る」じゃなくて、「一緒に頑張ろう」って言う所ですよ?
だって、私達、もう同じバンドのメンバーじゃないですか。
もう仲間なんですから、他人行儀な言い方は無しにしましょうよ。
仲間で一丸になって、澪先輩達にすっごい演奏を聴かせてあげましょうよ!」
言い終わった後、流石の純ちゃんでも照れ臭かったんだろう。
頬を少し赤く染めながら、照れ隠しなのかピースサインを見せた。
仲間……か。
言われてみれば、そうだった。
助っ人のつもりだったから自覚は無かったけど、助っ人でも仲間は仲間なんだ。
もう他人行儀な考え方をするのはやめよう。
期間限定だけど、私の新しいバンドとして、全身全霊で皆と演奏するんだ!
「分かったよ、純ちゃん。勿論、憂ちゃんも。
私、自分の事を助っ人だからって、軽く考えてたかもしれない。
でも、それじゃいけなかったんだ。
助っ人だろうが何だろうが、
メンバー全員が気持ちを一つにしなきゃ、いい演奏なんて出来ないよな。
だから……、一緒に頑張ろうぜ!」
私が手を挙げて宣言すると、憂ちゃん達も笑顔で手を挙げてくれた。
まだライブをする前に、この事に気付けて本当によかった。
単なる助っ人ってだけの気分だったら、いい演奏なんて出来なかったかもしれない。
それに気付かせてくれた皆には本当に感謝したい。
和が私のその様子を見て、静かに微笑みながら言った。
「久し振りに聞いたわね、律の『ぜ』って語尾。
私の前じゃたまに出してたけど、憂達の前じゃあんまり出してなかったでしょ?
律も憂達の前じゃ照れてたのかしら?」
「うおーい!
そこは気付いても黙っててくれよ、和ー……!」
和に言われなくても、そこは私も自覚してた。
憂ちゃんと純ちゃんの前じゃ、ちょっと口調変えちゃうんだよな、私。
二人が嫌いってわけじゃなくて、
年下に素の自分を見せるのはやっぱり恥ずかしかったんだと思う。
いや、梓は除くけどな。
でも、ぎこちなくても、少しずつそういうのはなくしていこう。
私達はもう仲間なんだから。
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