308:にゃんこ[saga]
2012/03/31(土) 17:55:43.77 ID:dC3rBIds0
◎
ライブ会場は私達が三年の頃に使っていた教室に決めた。
講堂を使うって選択も悪くなかったけど、
観客がほとんど居ない状態で広い空間を使っちゃうってのも何だか寂しい。
それにこれは私達の新しい決意のためのライブでもあるんだ。
高校時代、最後に人前でライブをやった場所で、
新しい世界での最初のライブをやってやるってのも悪くないじゃん?
準備はほうかごガールズの皆でする事になった。
勿論、澪達も手伝ってくれようとしてたけど、それは私から断った。
私達の後で澪達がサプライズライブをするとしても、最初にライブを開催するのは私達なんだ。
お客様には手間になる事をさせたくない。
別に八人でやるような作業でもないしな。
前みたいに時間制限があるわけじゃない。
教室をライブ会場に変えるくらい、五人も居れば十分だ。
机を端に寄せて、楽器を配置するのはすぐに終わった。
簡単なもんだ。
一度やった事だし、前もライブ会場設立の指揮をしていた和も居るんだ。
作業が速いのは当然ってやつだろう。
そりゃすごくあっさりと教室はライブ会場に変わっていた。
少し、胸が高鳴る。
その鼓動が緊張からのものなのか、興奮からのものなのか、自分でも分からない。
ただ、胸が高鳴る。
深呼吸。
衣装に着替えながら、配置された楽器に目を向ける。
私のドラム。
梓達のギターやベース。
そして、和が弾くキーボード。
ちなみにキーボードは梓の両親の物を借りて来たものだ。
やっぱり和もムギのキーボードを借りたがらなかった。
私が菫ちゃんのドラムを使うのを遠慮したのと同じく、
和もムギの相棒のキーボードを使おうとは思わなかったらしい。
それは勿論、ムギ達のためではある。
人のパートや相棒を借りたり奪い取ったりなんて、そんなのはしちゃいけない事だ。
絶対にしたくないし、私はされたくない。
例えムギ達が気にしないと言ってくれても、絶対に。
そして……。
二人の楽器を借りなかった理由の中には、私達の重要な信念も含まれていた。
私達は助っ人だけど、誰かの代わりじゃない。
最初は菫ちゃんの代わりを務められればそれでいいって思ってた。
わかばガールズの手助けが出来ればそれでいいと思ってた。
だけど、皆でセッションしてて、気付いたんだ。
私は菫ちゃんの代わりにはなれない。
和もムギの代わりにはなれない。
梓達もそれを望んでないんだって気付いたんだ。
私達は誰かの代わりになるんじゃなくて、
私達だから出来る新しい演奏を皆に届ければいいんだって。
放課後ティータイムじゃなく、わかばガールズでもなく、
新ユニットのほうかごガールズとして。
「よっしゃ!」
衣装に着替え終わった後、私は軽く自分の頬を叩く。
気合は十分。やる気も十分。
実力も……、多分、十分。
さて、やってやろう!
やってやろうじゃんか!
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