過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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371:にゃんこ[saga]
2012/05/02(水) 19:48:26.16 ID:FSovLwsL0
唯達の選択肢は大切にしたいと思う。
私は私達の生き方を強要したいとは考えてない。
そんな事はしちゃいけない。
でも、私は私の生き方を貫く。
誰に何を言われたって、それがこれからに大切な事だって思うから。

ホテルの部屋に戻った時、残っていた三人は私達を笑顔で迎えてくれた。
勿論、完全な笑顔じゃない。
不安や怯えの色も大きい曖昧な笑顔。
だけど、とにもかくにも、私達は笑顔だった。
これからどうなるのか、どう出来るのかは分からなくて、不安ばかりだ。
でも、笑う事だけはやめちゃいけない。
それだけは確かなはずだ。

そうして笑顔のままで居たかったけど、
それより先に私は真面目な顔になって、唯とムギに謝った。
泣いている二人を慰められなかった事。
気を回してあげられなかった事。
和、憂ちゃん、純ちゃんよりも、残された皆を大切にしてしまった事。
色んな事を謝った。謝らなきゃ前に進めないと思った。
これから前に進むために、それはしなきゃいけない事だった。
皆を守り切るために……。

唯達から責められるのを覚悟してたけど、二人とも私を責めなかった。
悲しそうな表情だったけど、二人で頷いてくれた。
色々悩んで、納得いかない事も多いはずだけど、私の想いを感じ取ってくれたんだと思う。
部員に恵まれてるよな、私は……。
こんな私なのに……。

唯達が責めなかった代わりに、澪が私を責める事になった。
いや、責めるってのは言い過ぎか。
諭す……って感じで、澪は苦笑しながら私の頭を軽く小突いた。
「そういう言葉を昨日言えてれば、立派な部長だったんだけどな」って。
それは確かにそうだった。
私は昨日、この想いを正直に皆の前で伝えるべきだったんだ。
突然の事に動揺してるくらいだったら、まっすぐに答えを届けりゃよかったんだ。
そうすれば、唯とムギをこんなに悲しませる事も無かったんだから……。

でも、とりあえずは、どうにか私の想いを皆に届けられた。
梓に後押ししてもらって、何とか前に進む事が出来た。
この世界で生きていく事も、これで出来る……はずだ。

結局、唯達が憂ちゃん達を捜す事を、私は止めなかった。
この世界で生きていくための準備だけ優先してくれれば、
後は各自の自由に過ごすべきだってのも、私の正直な気持ちだった。
私は皆を守るための準備をする。
何の問題も無く生きていけるために、出来る限りの準備をしておく。
唯やムギは消えてしまった三人を捜す。
梓と澪も自分に出来る何かをするだろう。
てんでバラバラだけど、それが私の選んだ道なんだ。
でこぼこな私達が、上手く噛み合って生きてくってのはそういう事だと思う。

そうして、私達はどうにか笑顔になった。
誰からともなく、手を繋ぎ、皆の体温を感じ合った。
強く強く、皆と一緒に居られる事を感じる。
せめて残されたこの五人だけはずっと一緒に居たい。
居るんだ、何が起こったって……。

皆でずっと一緒に居る事。
それが私が一番やりたい事なんだ。
何があったって、絶対に……。

私はそう思ってた。
心の底からそう思ってたんだ。
梓と話をして以来、どんどん膨らむ不安からずっと目を逸らしながら。
皆と離れ離れになる事だけは絶対にしちゃいけないんだって思いながら。
多分……、偽りの笑顔を浮かべて。


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