過去ログ - 律「閉ざされた世界」
1- 20
4:にゃんこ[saga]
2012/01/17(火) 18:39:09.01 ID:mvyE/vRa0
「でもね、律。
焦る状況じゃないし、焦ってどうなる状況でもないけれど、
打開策を練らなきゃいけない時ではある事も分かってくれてるわよね?
こう見えて私も動揺してるんだから、少しは律を頼りにさせてもらっていいかしら」

「頼りにって……、私なんかでいいのかよ?」

「律しか居ないし、律がいいと思うわ。
こんな無茶苦茶な状況、解決出来ないまでも打開策を考えられるのは律か唯しか居ないと思う。
でも、唯は憂につきっきりだし、頭を使うのは苦手な子だものね。
だから、こんな無茶苦茶な状況に適応出来るのは、いつも無茶苦茶な律しか居ないと思うのよ」

「褒めてんのか? 貶してんのか?」

「褒めているのよ」

真顔で和が答える。
そもそも和は冗談を言うタイプの人間じゃない。
非常に微妙だけど、一応褒めてはくれているんだろう。
それにこんな無茶苦茶な状況ってのは、確かに和の言葉通りだ。
軽く溜息を吐いてから、私は立っていた場所から数歩歩いて、
屋上の柵から身を乗り出して私達の母校の桜高を大きく見渡してみる。

グラウンドには誰も居なかった。
校庭にも、通学路にも、廊下にも誰も居ない。
誰も、居ない。
夏休みだからってわけじゃない。
夏休みだって部活動の生徒は居るはずだし、
仕事をする先生や補習する生徒だって大勢居るはずだ。
でも、やっぱり、
誰も、居ない。

学校だけじゃない。
町の方に視線を向けても、まだ午前十時過ぎだってのに、車の一台も見かけない。
通りすがる人すら居ない。
こんな事になってから、何十軒もの家を訪ねてみた。
どの家にも誰も居なかった。
会話の音も聞こえない。
人の生活音すらしない。
風や風に靡く植物の音程度しか聞こえてこない。
誰も、居ないんだ。

私達以外、誰も居ない世界。
それが、あの夏休みの日以来、私達に訪れてしまった無茶苦茶な状況だ。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
657Res/1034.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice