408:にゃんこ[saga]
2012/05/09(水) 19:44:07.55 ID:OawZK8Yu0
◎
澪と二人きりでロンドンの街を歩く。
ロンドンに転移させられてから七日目。
ここ三日連続くらい、私は澪と一緒にロンドンの街を探索している。
本当は唯とロンドンを回りたかった。
今まで避け続けてた唯の支えになってやりたかった。
だけど、それは出来なかった。
私が唯を避けてるからじゃない。
今度こそ、それは嘘じゃない。
唯が私を避けているからだ。
どうして避けられてるのかは分からない。
あの夜、ホテルの屋上で話をして以来、唯は私と視線を合わせようとはしなかった。
落ち着いて話をしようとしても、ムギか梓を連れていつの間にか何処かに行ってるんだ。
嫌われてしまったんだろうか……。
いや、唯はそう簡単に人を嫌うような奴じゃないはずだ。
人を嫌える奴じゃない。
色んな人を好きになっちゃう奴なんだ。
少なくとも、私の中では唯はそういう奴だった。
だったら……、どうして唯は私を避けるんだろう。
今の所、思い当たる事は何も無い。
避けられる憶えは無いんだよな……。
でも、多分、何かの理由があるはずだ。
私はそれを深く踏み込んで聞いちゃいけない気がしてる。
私だって澪とどうしても視線を合わせられない時があった。
誰だって何かの事情を抱えてる時があるんだ。
だから、唯が私と話したい時が来る時まで、待とうと思う。
それもあいつを支えてやるって事のはずだから。
ロンドンの外回りについては、
まだ心配してくれてるのか、何度か梓が私を誘いに来てくれた。
一緒に風呂に入った時、私の様子が変だった事に気付いてるのかもしれない。
気を遣ってくれるのは嬉しかったけど、それは断った。
梓の傍に居てまた自分が抑えられなくなるのが怖かったからだ。
梓の未来を私の勝手な行動で無茶苦茶にしたくない。
でも、それと同じくらい大きな理由がもう一つある。
梓の優しさを皆にも分けてあげてほしい。
私に前に進む翼をくれたみたいに、ムギや唯にも翼をあげてほしい。
梓の優しさを感じさせてあげてほしい。
そう思ったから、私は梓の誘いを断ったんだ。
誘いを断った時、梓は少し寂しそうな表情を浮かべたけど、
「最近、澪と二人っきりになる事も少なかったからな」って言うと、納得してくれた。
「仲の良い幼馴染みですよね。
正反対なお二人が仲良しだなんて、未だに不思議です。
それにしても、律先輩ったら意外と寂しがり屋だったんですね」って生意気な事も言いながら。
少し不本意だけど、それでもよかった。
澪と一緒にロンドンを歩いてみたいってのも、私の本音には違いなかったから。
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