435:にゃんこ[saga]
2012/05/16(水) 18:30:45.42 ID:WgkY/9oG0
◎
頭が真っ白になった。
何が起こったのか、何が起こってるのか、分からない。
息苦しいほどの心臓の鼓動と震える自分の指先だけは感じる。
かなり長い間、放心してた様な気がする。
不意に唯に見つめられている事だけには気付き、
やっとの事で頭の中で何かを考える事だけは出来るようになった。
だけど、それだけだった。
次々と湧き上がる疑問と不安と恐怖と後悔で頭の中がぐちゃぐちゃだ。
考える事が出来るようになったって、余計に嫌な気分になっていくだけだった。
それでも、私の中の思考は止まらない。
何だよ?
どうしてピックが唯の枕カバーの中にあるんだ?
いや、分かってる。
唯が拾ったからだ。
私の捨てたピックを探し出して拾ったんだ。
ピックの事を唯がどうして知ってる?
あの日、屋上でピックを捨てた私を見てたのか?
ピックを捨てた直後じゃなくてもっと前から唯は私を見てて、
たまたま屋上に顔を出したわけじゃなくて、
ピックを捨てた私のそれ以上の行動を止めようと姿を現したって事なのか?
だけど、いくら何でも、
あの暗さの中じゃ私が何かを捨てたって事しか分からなかったはずだ。
……分からなかったはずなんだ。
でも、唯は二つだけとは言え、ピックを拾い集めてる。
三日間掛けて……、そうだよ、三日間掛けたんだ、唯は。
何の手掛かりも無く、誰にも秘密のままで、一人で探し出したんだ。
憂ちゃんより、純ちゃんより、和より、私の投げ捨てた物を優先して。
こんな状況で三日間も掛けて……。
一人っきりで……。
胸が締め付けられるように痛むのを感じる。
きっと私は喜ぶべきだったんだろう。
私の事にそんなに目を向けてくれてる親友が居るって事を、嬉しく思うべきだったんだ。
頭では分かってる。
分かってるのに……、そう考える事が出来ない。
自分にそれだけの価値があるなんて、どうしてもそう思えない。
私にはまだ何も出来てない。
出来てないだけならまだよかった。プラスマイナスゼロならまだよかった。
でも、私自身が一番よく分かってる。
私の存在はプラスマイナスゼロどころか、皆にとってマイナスにしかなってない。
ムギを不安にさせて、梓に気を遣わせて、澪に心配を掛けて、
そして、唯には……、唯には……。
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