過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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438:にゃんこ[saga]
2012/05/16(水) 18:32:54.57 ID:WgkY/9oG0
「じゃあ……、また後でな、二人とも」


そう言って、澪は部屋から出て行ったみたいだ。
みたいだってのは、結局私は澪の顔どころか姿にすら視線を向けられなかったからだ。
扉が閉まる音と澪の足音で、部屋から出てったんだろうなって判断しただけだ。
私って奴はどれだけ情けないんだろう……。

ともあれ、私はそうして唯と二人きりになった。
唯の気配りのおかげで、二人きりになれた。
話したい事は沢山あった。
話さなきゃいけない事も沢山あった。
だけど、情けない私は何をどう切り出していいか分からなかった。
病人に気を遣わせておいて、それでも、何も出来なかったんだ、私は……。


「ごめん……ね……、りっちゃん……」


結局、情けない私より先に話を始めてくれたのは唯だった。
前も聞いた言葉から、唯は切り出したんだ。
唯が言うべきじゃない言葉から……。


「隠してて……、ごめん……。
ピック……、全部揃えてから、渡したかった……から……。
隠してて……、ごめんね……。
二つしか見つけられなくて、本当に……ごめん……」


「二つしか……って……。
どうして、唯……、ピックが三つあるって……。
大体……、何で私がピックを捨てたって……」


口を開く度に泣き出しそうになってしまいながら、唯に訊ねる。
そうだよ……。
私がピックを捨てた事までは気付けたとしても、
唯はどうしてピックが三つだって事を知ってたんだ……?

唯がばつの悪そうに微笑んでから、息も絶え絶えに続ける。


「分かるよ……。
前にね……、屋上でりっちゃんが何か捨ててるの見かけて……、
見つけなきゃ……、拾わなきゃ……って思ったんだ……。
何か分からないし、見つかるかなって思った……んだけど……、
見つかってよかった……、よかったよ……」


「だから……、どうして三つだって……。
放課後ティータイムみたいなマークは描いてるから、
ピックだって事はどうにか分かったにしても、どうしておまえは……」


「え……っ?
だって……、それ憂達のなんだよね……?
憂と……、純ちゃんと……、あずにゃんの……だよね?
ライブの時……、りっちゃん、あずにゃんに何か渡そうとしてたから……。
その時のピックなんだろうなって……、思ったんだ……」


鋭いな、と思った。
唯って奴はどうしてこう……、妙な所で鋭いんだよ……。
そうだよ……、その通りだよ、唯……。
おまえの言う通り、投げ捨てたピックは三人に渡そうとしてた物だよ……。
でも、それはもう……、もう必要無いから……、捨てようとした物なんだ。
だから、悪いけど、唯……。


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