過去ログ - 律「閉ざされた世界」
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440:にゃんこ[saga]
2012/05/16(水) 18:33:46.89 ID:WgkY/9oG0
それ以上の唯の言葉は聞けなかった。
急激に唯が苦しみ始めたからだ。
痙攣してるみたいに身体を震わせ始めて、呼吸も荒くなって、
本当に辛そうに……、苦しそうに……。


「唯……? おい、唯! しっかりしろ! おい……!」


「うぅ……、だいじょ……はぁはぁ……ぶ……」


「大丈夫なわけがあるか!
今、澪達を呼びに……!」


瞬間、私の中で一つの記憶が甦った。
夢か……、妄想か……、現実か……。
とにかく私の中に唐突に溢れ出すように記憶が湧き上がって来る。
思い出すのは今と同じ様に病室のベッドに横たわる唯の姿。
ベッドの上で沢山のコードに繋がれた唯の姿……。
辛そうに唯の姿を見下ろす憂ちゃんと和。
遠巻きに三人を見つめる私と澪とムギと梓……。

何だ?
この記憶は何だ?
どうしてこんな記憶が私の中にある?
私達は一陣の風でこの閉ざされた世界に迷い込んだけど、
こんな状態になった事は一度も無かったはずだ。
無かったはずなんだ……!

でも、違う、と私の中のもう一人の私が考える。
曖昧だった記憶が少しずつ辻褄を合わせてまた甦ってくる。
そうだよ……。
あの一陣の風が吹いた日……、やっぱり私達は間違いなくライブをやったんだ。
菫ちゃんと奥田さんって子も紹介されて、わかばガールズのライブも聴いたんだ。
帰り道、さわちゃんも一緒に学校から帰ってて、
その途中で私達は……、私達は何かがあって大怪我をして、
その時に強い風が吹いて、でも、その風はただ吹いただけで……、
それで……、それで唯は……。
今みたいにベッドの上に……。

突然の記憶の渦に巻き込まれて、息が出来なくなる。
これ……か……?
こういう事だったのか……?
私は……、私達は……、だから、失いたくなかったのか?
失う事が怖くて仕方が無かったのか?
失いたくなくて、傍に居たくて……、それでこの世界に逃げ込んだのか?
目眩がしてしまいそうだ。
いや、実際に目眩がしてる。
唐突な真実を受け止めきれない。
でも、そんな事よりも、今は……、今は、そう……。


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